コイトゥス再考 青山裕企

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コイトゥス再考 #08

写真家・青山裕企

なぜスクールガール・コンプレックスはこんなにも売れたのか?

文・写真/辻陽介


―少年の視点で切り取られた、少女に対する戸惑いと妄想―

昨年7月に発売され、写真作品集としては異例の売上げを誇った『スクールガール・コンプレックス』。

有名アイドルの写真集ならばおろか、無名の女性をモデルとした、顔もなく、局部もなく、あまつさえパンチラもない“写真作品集”が、発売から僅か4日で大幅な増刷、さらにはamazonの本総合ランキングで2位にランクインしたというのだから、これは事件である。

飽くまでも芸術作品であるとはいえ、これは純然たるフェティシズム表現。現代エロスの再考を目論む本欄としては、この現象を等閑に付すことはできない。

なぜ『スクールガール・コンプレックス』はこんなにも売れたのか、また今年リリースされた超フェティシズミックな写真作品集『絶対領域』について、写真界の寵児・青山裕企氏に訊いた。



(2011年4月 東京都某所にて)


?現代のエロ、性愛の再考察をテーマとする本欄ですが、本題に入る前に、昨年出版され、写真集としては異例のヒットとなった青山さんの作品集『SCHOOLGIRL COMPLEX(以下、SGC)』について少しお伺いしたいと思います。まず、『SGC』制作の動機はどういったものだったんです?

青山 そもそも写真作品を展示などで発表するというのが当時の僕の中心の活動ではあったんですが、一度、グループ展で4人の写真家と展示をすることになったんですね。その時のテーマが「変態」だったんです。それまでの僕の作品というのは爽やかであったりポップなものが多かったので、「変態」というテーマにはそぐわず、そこで、まぁ折角の機会だし自分の変態性を探してみようということで、自分を掘り下げていったんです。そして到達したのが、自分の思春期、高校生時代の頃に抱えていた、いわゆるムッツリスケベ的な部分だったんですね。僕は表立っては大人しい高校生だったんですよ。女性とお付き合いしたこともなく、うぶだったというか。


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『SCHOOLGIRL COMPLEX』
(イースト・プレス)



―まぁいわゆる童貞クンだったという(笑)

青山 完全にそう(笑)。手すら繋いだことがなかったので、周りにいる女の子たちを見てすごくドキドキしてたわけです。とはいえジッとは見れないし、相手だってヌードなわけじゃないので、せいぜい制服から透けてる下着の紐であったり、うなじであったり、ヒザ裏であったり、まぁそういうちょっとした部分を発火点に想像を広げていたわけです。童貞がゆえの爆発的な想像力ですよね。もちろん、今もそういった部分はなくはないのですが、当時は本当にすごかったんです。また、女性を知らないがゆえの神聖な気持ちと言いますか、女性のことをただ性的な目線で見ていたわけじゃなかったんですよね。

?ある種の神秘を感じていた?

青山 そう。女性というものに非常にピュアなものを見ていたんです。実際の女性は全然そんなことないんだけど(笑)。まぁ当時はそう見えてた。つまり、ある種の女性に対する神聖視というのがうぶな童貞男子の視点なのかな、と過去を振り返ってそう思ったんです。で、それを作品にできないかな、と。だから女性の顔を写さないというのは最初から決めてたんです。


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SCHOOLGIRL COMPLEX』より



―顔がないことで記号的な表現になってますよね。

青山 当時の自分の視点を思い出しても、その視点の中に女の子の顔というのは余り入っていないんですよね。目が合ったらすぐ逸らしちゃいますから。見続けるような強さっていうのは無かったので(笑)。だから、いつも後ろ姿であったり、下半身だけを見ているというか。もちろん好きな子というのもいたわけですけど、そういう特定の子を見ていたと言うより、ただ周りにいた匿名的な女子高校生というものを見ていたのかなって気がするんですね。だから『SGC』に関して言えば、当時まぁ童貞で良かったなとは思ってますよ(笑)

―ある意味、アンハッピーな視点ですよね(笑)。ところで、青山さんは今年に入って『絶対領域』というこれまたかなりフェティシズミックな写真集を出されてますよね。

青山 『絶対領域』(※)については、元々は企画ものとしてスタートしたんですね。なので当初はビジネスライクにやろうかなと思っていたんです。ただ、撮り続けているうちに面白くなってきましたね。最初は企画ものだし名前を出さないでおこうと思ってたんですが、撮り進めていくうちに作品としても耐えうるものになるのではないかと思い始め、結局は僕の作品という形で発表したんです。


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『絶対領域』
(一迅社)


『絶対領域』…2011年2月に発売した青山氏による写真集。絶対領域とはスカートと膝上ソックスの間に出現する“ふともも部分”のこと。


―そもそも絶対領域に関心はあったんですか?

青山 気にはなってましたけど、虜になるほどではなかったですね。撮影中においても一定期間その部位ばかり撮影していたので、言ってしまえばエロくなくなってきてしまうわけで。文字通り、領域を撮ってるわけですからね。ただ、この領域感はあるな、とか絶対領域を様々な角度観点から捉えていく撮影になったので、その部分では面白かったと思ってます。

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