ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ06
ハイヒール
HIGH HEEL : BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA
欧米では基本的に家の中で靴を脱ぐ習慣はない。ベッドに入るとき以外、ほとんど靴を脱ぐことはないのだ。だからこそ、「ハイヒール」を履いた女をそのまま寝室に誘ったり、靴を脱がすことなく性行為に及ぶことも日常的にあり得ることだ。そして「ハイヒール」は、女を象徴する性のアイテムとして、男たちの欲望を掻き立て、童話「シンデレラ」を見るまでもなく古くから存在していた。
「ハイヒール」の登場は17世紀、もともと背の低い女官たちが長身に見せるために着用し始めたという。当時、女たちは長いドレスで着飾り、足を見せることはなかったため、「女の靴」は「女性器」にも似た神秘性を持ち、「ハイヒール」のフェティシズムが始まることになる。18世紀には「ハイヒール」を性のシンボルとして扱う文学作品が生み出され、代表的なものとしてはレチフ・ド・ブルトンヌの「ファンシェットの足」や「ムッシュ・ニコラ」、ウィルヘルム・イェンゼンの「グラディーヴァ」などがあった。特に、ドイツのイェンゼンの作品は童話「シンデレラ」へと繋がっていったことで知られる。
「ハイヒール」が、男が女に履かせる性のアイテムとなるのは19世紀になってからだ。最初、「ハイヒール」を履いた売春婦たちが人気を得たことから普及し、靴の工業的量産化の波も手伝って、男たちが自分の妻や恋人に「ハイヒール」を買い与えるようになった。そして「ハイヒール」について述べるとき、よく比較されるのが中国の「纏足」である。
「纏足」は10世紀頃に始まり、16世紀には中国の漢族の間では「纏足」をしないのは恥といわれるまで普及していた。「纏足」とは、3、4歳頃から足を強く縛って成長を妨げ、10センチ位の大きさに矯正するもので、その形状は人造「ハイヒール」とでもいうべきものであった。当然歩行は困難になるが、そのヨチヨチ歩きの様が中国の男たちの性的な興奮をより増大させたという。また、「纏足」の効用として、肛門拳筋を鍛えることから膣の締まりを良くすると信じられていた。「ハイヒール」にもまた、同様の効果があると考えられる。
ここでもジョン・ウィリーの「ビザール」が「ハイヒール」に対するフェティシズムの理解を大きく助けてくれる。1940年代後半に創刊されたこの雑誌では、「ハイヒール」を履いた女の後ろ姿の写真が多く紹介されている。「ハイヒール」を履いた女の無防備さが男のサド心を煽り、後ろから襲い掛かり、縛り上げて連れ去りたいというレトロ・ボンデージならではのセックス・ファンタジーがそこにある。
90年代以降、ボンデージ・ファッションの流行を経て、プレイ用の「ハイヒール」も市販されるようになった。日本でも野外では愛奴にプレイ用「ハイヒール」を履かせ、たっぷりと後ろ姿を視姦して、欧風フェティシズムの王道を堪能して欲しいものだ。
※「ハイヒール」を履いた女の足はまるで縛られた女体のようにも見える。17世紀ヨーロッパで登場した「ハイヒール」には、中国の「纏足(てんそく)」と同様に、肛門拳筋を鍛えて膣の締まりを良くする効果もあるという。
※童話「シンデレラ」にも見られるように、ヨーロッパの服飾フェティシズムの始まりは「ハイヒール」からという。その典型的シチュエーションのひとつは、ヒールを履いた女が窓や踊り場から身を乗り出している後ろ姿を視姦するもので、無防備となった下半身が欲情の対象となるのだ。
※「ハイヒール」至上主義者たちの中には、ついには「靴」そのものに欲情するケースもある。
ケロッピー前田
1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com
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