ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ19
フェラチオ
FELLATIO : BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA
「フェラチオ」という言葉で何を連想するかは、人によって全然異なるだろう。
実際のところ、日本では、それについての宗教的問題もなく、「口でする」行為自体を「してはいけない」こととして強く排除する傾向はなかったように思う。しかし、キリスト教をベースとする欧米では、想像以上に「口でする」ことに対する拒絶反応が激しく、だからこそ、例えばアメリカでは、「フェラチオ」にかかわる“事件”が、全国民の脳裏に焼き付くほどのインパクトで報じられ、「フェラチオ」の猥褻度がビンビンに高められ、凄く興奮させられてしまうのだ。
1998年、当時の大統領クリントンが前代未聞の国会喚問を受けた。それは、ホワイトハウスの実習生であったモニカ・ルインスキーが、ホワイトハウス内で大統領をフェラチオしたという“事件”についての喚問であった。全米にテレビ放送された内容は、なんとクリントン大統領の精液がかかったというモニカのドレスが証拠として提出され、DNA鑑定により、確かにモニカのドレスに大統領の精液が付着していたことが立証されると、逃れられなくなったクリントンは、モニカとの「不適切な関係」を認めたというものであった。ホワイトハウス内で、時の大統領が実習生と情事に耽った事実も衝撃であったが、「フェラチオ」に焦点を絞り、国会で証人喚問までやってしまったことに驚かされる。クリントンをそこまで追い込んだのは現大統領ブッシュ率いるキリスト教右派で、その後の報道によると、クリントン事件がきっかけで、結局、アメリカのティーンエージャーの間で「フェラチオ」が大流行することになったという。
元々、アメリカにおいて、「フェラチオ」が広く受け入れられる最初の“事件”となったのは、72年公開のポルノ映画「ディープ・スロート」だった。喉にクリトリスを持ち、口が性器になっている女が登場する架空のストーリーで、ハードコア・ポルノの作品としては空前のヒットとなったのだ。ここで面白いのが、同時期に起こった政治スキャンダル「ウォーターゲート事件」の内部情報提供者のコードネームが、まさに「ディープ・スロート」と呼ばれていたことであった。「ウォーターゲート事件」とは、当時の大統領ニクソンが、国家機関のスパイ組織CIAを個人的に利用し、諜報活動を行ったことが社会的に大きく避難され、大統領辞任に追い込まれるというものだった。そんな大事件に、「ディープ・スロート」という言葉が使われたことで、男性器を喉まで喰わえ込むことを意味する猥褻用語が、アメリカ全国民の記憶に深く刻み込まれることになったのだ。
ネットで検索していくと、黒人女性政治家のライス元国務長官は「フェラチオをするか」という議論まで発見した。「フェラチオ」を「してはいけない」こととして恐れているからなのか、アメリカ政治の周辺は、なぜか「フェラチオ」まみれなのである。
●口は第二の性器ともいわれ、「フェラチオ」は性技のひとつとして磨かれてきた。喉の奥まで喰わえることを「ディープ・スロート」、口を性器に見立ててピストンすることを「イラマチオ」、男自身が自分のモノを喰わえることを「オートフェラチオ」と呼ぶ。
●欧米で、「フェラチオ」が復活するのは、72年公開のポルノ映画「ディープ・スロート」から。それ以前、「フェラチオ」という言葉が知られるようになったのは、喜劇王チャプリンの二番目の妻リタが「フェラチオを強制された」と暴露したためという。
●「フェラチオ」の語源は、ラテン語の「フェラール(吸う)」から来ており、ヨーロッパでもキリスト教普及以前のギリシア・ローマ時代には行われていたという。欧米では、生殖に繋がらない「口でする」行為は、性倒錯と見なされていた歴史は長いのだ。
ケロッピー前田
1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com
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