ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ20 【熟女フェチ】

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ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ20

熟女フェチ

MATURE WOMAN : BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA


 男の性機能は40歳を過ぎると個人差はあれ衰えを見せ始め、それでも70歳くらいまでは現役を貫けるといわれる。同様に、女たちもまた子供を作るという意味でのピークを過ぎたあとも、性に対する欲求を持ち続け、生殖におけるピークを過ぎてこそ、セックスへの強い渇望を覚えるのかもしれないのだ。若かりし頃は恥じらいのために抑圧していたセックスへの欲求が、出産経験やある年齢に達したことで、自分の欲求を隠すことなく積極的に男たちとコミュニケーションを図ろうとするようになる。そのようなことが実際にあり得ることであるからこそ、「熟女」のエロティシズムは、「熟女」マニアと呼ばれる人たちを生み出す原動力となり得ているのではないか。


 日本のAVでは、業界のピークを支えたベテラン女優たちが熟女の域に達し、それでもAVに出演し続けることが、独特なリアリティを生み出し、ますます欲情をそそる作品が作られているという。欧米では「セックスワーカー」という言葉があるが、まさにセックスを職業とした女たちが背負い込んだ「性(サガ)」が業界の中で磨かれ、「天性の才能」となり、「エロスの女神」ともいうべきエロティシズムとして「若さ」を越えて守られ続けることになるのではないか。彼女たちが歳を経ることで、ますます生まれ持ったエロティシズムが際立ってくるのが面白いのだ。


 わかりやすくは、「熟女」は、姉や母親といった近親相姦的なイメージや女教師などの年上への憧れというイメージと重ね合わせられるという。しかし、「若さ」を越えた「女」ならではのエロティシズムの発見こそが、真のマニアたちのツボではないか。真の「熟女」マニアたちは、“50歳以上”こそが理想であるという。しかし、普通の感性からいえば、彼女たちはもはや「老女」と表現した方がいい、「女」として限界ギリギリの状態にある。それでも、肉体的に子供を作る能力がなくなった女たちであればこそ、生ハメ中出しOK。「女」としてのアイデンティティの葛藤を乗り越え、我を忘れて欲情するときの“色気”を堪能できるともいうことか。


 例えば、熟年男性たちにとっては「熟女」も同世代の女たちに対する欲情である。ともすると熟年男性たちは、若い女たちと関わることで、自分たちに失われた「若さ」を取り戻したいと思うことが多いだろう。自分の肉体は朽ちても自分の精神的な「若さ」に比類する若い女たちとのセックスから、性のエネルギーを補充したいのだ。しかし、「熟女」たちの中にもまた、「女」としてのエロティシズムが常に隠されていることを軽んじてはならないだろう。


 子供が減り社会全体の平均年齢が年々上がりつつある現在、「熟女」たちの性開放は、エロティシズムの幅を大きく広げている。一生を通じて、“性を楽しみたい”と思うなら、「熟女」の再発見にこそ、さらなる性のチャンスを見つけることができるはずである。「老い」に特化した真性マニアになるかどうかは別として。



●アメリカに「オーバー50」を専門とするポルノ雑誌がある。彼女たちが若かりし頃は、フリーセックスとポルノ全盛の70年代、性開放を自らの肉体で表現してきたのち、老いてもまだ乙女の心を残し、今や「熟女」の性開放を推し進めているのだ。





ケロッピー前田


1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com