ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ24
セックス・マシーン
SEX MACHINE : BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA
中世から近代に到る時代、そして、機械仕掛けから電気式への転換期に、確かに「マシーン」に対する「エロティシズム」があった。魔女裁判のために登場した各種の拷問器具が、当時の最新機械技術の結晶であったように、非人間的で、金属的で、無機質的なモノが、温かく柔らかい女体の体内を犯していくことに、サディスティックな欲情をかきたてられるのだ。そういう意味で、“機械仕掛けのエロティシズム”は、「セックス・マシーン」の重要なファクターである。
そして、およそ100年前、電気の登場とともに、性感帯に電気を流すというアイデアが生まれた。蓄音機や電話などの発明家で知られるエジソンでさえ、電気技術の応用として最初に思い付いたのは、電気による霊界との対話であったという。当時は、電気に潜むオカルティズムが信じられていたからこそ、性器に電気を流すことは、性エネルギーの注入であり、生命力の蘇生にも繋がるものであり、最高の快感を得られるかもしれない行為であったろう。1915年には、男性器に電流を流し、勃起させるための機械が作られている。また、女性向けの電気式バイブレターも登場しているが、キリスト教世界では宗教的理由からマスターベーションに対する嫌悪感は強く、それらの初期の電気式「セックス・マシーン」は、医師による不感症や勃起不全などの治療のために用いられていたケースも多かったと想像される。
ちなみに「セックス・マシーン・ミュージアム」のコレクションは、1920年代の映像技術の登場でひとつの区切りをつけている。創立者オリアノ・ビゾッチ氏が「セックス・マシーン」とは“機械的な刺激”であり、物質的なフェティシズムにこだわっているからである。映像技術とエロとの融合は、人間の内面を投影した「視覚的エロティシズム」だからであろう。将来、“女アンドロイド”が登場するようなことになったとき、ビゾッチ氏のおメガネに叶うものとなるのか、技術屋たちのお手並み拝見というところか。
●「セックス・マシーン」の歴史は、1580年の貞操帯に始まる。高度な金属加工ができるようになったとき、その技術は愛奴の下半身を管理するためにまず応用されたのだ。過去の時代に思いを馳せるほど、なぜか猥褻な気持ちが込み上げるのだ。
●「セックス・マシーン」は、そこに女がいなくとも、「どのように使われるのか」を想像するだけそそられる。金属的な無機質感、冷たく硬い、非人間的なモノが女体に試されるとき、暴力的なサディズムが刺激されるのだ。
●機械仕掛けのピストン運動器具や電気式性感刺激マシーン、仕組みの解説図などが並ぶが、1920年代の映像技術の登場をもって、骨董的性具収集に区切りをつけ、現代のコレクションは、ピアッシング、ラバー、拡張具などのフェティッシュ・グッズである。
ケロッピー前田
1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com
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