ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ32 【トランスジェンダー】

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ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ32

トランスジェンダー

TRANSGENDER: BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA

 ある男性読者が本誌を開き、女がヨガる写真でオナニーをしている。脳内ではどんな作用が起こっているのかを想像してみよう。


 一般的な読者なら、自分がご主人様になって、「もっとヨガってみろよ」とサドっ気たっぷりに言葉嬲りする様を想像しているかもしれない。だが、一方、マゾっ気を持つ読者なら、ヨガる女に自己投影している場合もあるだろう。実際、多くのAV作品の中には、明らかに女優に自己投影し易いように工夫されているものもある。アイドル歌手の追っかけをやっているタイプの男性は、憧れのアイドルに自己同一化してしまっているかもしれない。


 「トランスジェンダー」という言葉だけ見ると、「オレはオカマじゃねーよ」と拒否してしまう読者もいるかもしれない。しかし、すでにあらゆる性のイメージで脳内を犯されてきた現代人にとって、脳内でのジェンダーの揺らぎは多かれ少なかれ発生しているのではないだろうか。特にフィクションとしての性的ファンタジーの世界では、もはや自らが男であるか、女であるかも自由であり、どんな対象との性的行為を夢想してもいいのだ。そんな世の中にあって、あえて、その性的ファンタジーの実践者たらんとする人たちが「トランスジェンダー」と呼ばれる人たちとも言えるのだ。


 一方で、「トランスジェンダー」の実践者たちの急増は、「トランスセクシャル」と呼ばれる「性同一性障害」の人たちを世間的な偏見からいくらか救済したともいわれる。確かに、性器の畸形や未発達のために、生後間もない状態では性別がはっきりしない人もいる。状況はさまざまだが、「トランスセクシャル」の人たちは、その障害を正し、自分に適した性別で暮らしていきたいケースも多い。「トランスジェンダー」は先天性であれ後天性であれ、社会的な性別の規範から外れたい人たちだが、広い意味では「トランスセクシャル」をも飲み込んでしまっている。


 さらに「トランスジェンダー」の実態化は、女でも男でもないものに欲情してしまう性癖の人々を増殖させている。それは“美しい女性”ならチンチンがついていてもかまわないという極論にまで達する。


 そうすれば、ヨガる女に自己投影しつつ、彼女についている男根をシゴくことができるのだ。そんなオナニーをしている読者はどのくらいいるだろうか。いつか調べてみたい。




●“男である”というストレスからの解放を求め一時的に「女装(トランスヴェスタイト:TV)」を楽しむ人たちがいる。一方で、性器の畸形や性別判断ミスから「性同一性障害」に悩む「トランスセクシャル(TS)」がいる。その両者を柔軟に含み込む言葉が「トランスジェンダー(TG)」なのだ。


●「トランスジェンダー」という言葉が広く使われるようになったのは80年代くらいという。「性革命」の時代を経て、「フリーセックス」や「ゲイ」が解放され、性の越境とそれに伴う倒錯的性行為までもがオープンに語られるようになったきたからだろう。


●性転換手術が可能となり、両性具有の実践者たちも登場してくると、フィクションの性的ファンタジーは過激さを増す。日本のオタク・エロ界でも、「男の娘(オトコノコ)」(「チンチン付き美少女」あるいは「女装した美少年」)萌えが流行中、脳内の「トランスジェンダー」化は急速に進んでいる。




ケロッピー前田


1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com



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