ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ33　【オカルト】

ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ33

オカルト

OCCULT: BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA

　イギリスの作家コリン・ウィルソンは、「オカルト」を近代以前の神秘主義から現代へと連なるもとと捉え、それが持つ「見えざる力」が人間の精神に及ぼす影響に注目した。特に19世紀に活躍した神秘学者たちは、現代の「オカルト」（あるいは「スピリチュアル」）の基礎用語を多く生み出している。神智学（セオソフィー）を創始してのちチベットに渡ったブラヴァツキー夫人（1831～1891）、性魔術に没頭したクローリー（1875～1947）、ロシア宮廷で権力を持った霊能者ラスプーチン（1872～1916）、修行を重んじ20世紀最大の神秘思想家となったグルジェフ（1877 ? ～1949）らは、二つの世界大戦を跨ぐように、近代以前の「闇」の領域を現代へと伝えたのだ。


　澁澤龍彦が、サド翻訳でSMとエロティシズムの作家として名を馳せたばかりでなく、「神秘主義」の紹介者としても活躍したのは、オカルトとエロスが「闇」の部分で繋がっていたからに他ならない。同時に、澁澤が日本に積極的に紹介した超現実主義芸術「シュールレアリズム」もまた、人間の無意識に潜む「闇」を表現していた。


　一方、「宇宙人」「心霊現象」といった現代的なオカルトは、第二次大戦後の1945年以降から登場する。そこでも、処女と思しき少女たちがポルターガイストを起こし、宇宙人に誘拐されたと主張する女の中には人体実験をされ、その証拠となる身体の傷を晒し、宇宙人の子どもを産んだというケースもある。ここではその真相を論ずるつもりはない。重要なことは、「神がかり」となるのは多くは女で、霊が降りて来る体験は、どこかで女体に隠された潜在的な性エネルギーと繋がって「見えざる力」として表出するのだろうということだ。なぜ、彼女たちは、霊や宇宙人に犯されなければならなかったのか。そこには彼女たちが抱えるコンプレックスも投影され、それぞれのケースに応じたストーリーが展開されている。


　ゼロ年代に入り、「オカルト」は「スピリチュアル」と名を変え、女の子たちにより広く受け入れられるようになっている。それでもなお、“神秘体験”が彼女たちを霊的なエクスタシーへと導いている事実は変わらない。


　とはいえ、「オカルト」という媚薬に酔わされていた女たちが、あるとき、真の「エロス」に目覚めさせられ、その呪縛から解き放たれる瞬間もまたあることかもしれない。




●明治維新に西洋文化が流入した際、日本古来の“心霊”を見てしまう人たちを異常な精神状態と考え、「変態（心理）」と呼んだ時代があった。当時、オカルトもエロスも“異常さ”において、同列に並べられていたのだ。


●「オカルト」は「スピリチュアル」と言い換えられることで、現代の女の子たちに広く浸透している。彼女たちのモヤモヤは、オカルト的な神秘の力で解決すべきか、それともエロスの力で解決すべきなのか。


●宇宙人に誘拐され、強姦され、その子供を産んだと主張する女たちも実在する。白人美女の金星人との接触を公表したアダムスキーですら、エロス的願望が“宇宙人”に投影されているように見える。その真相は？

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