ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ39
鞭
WHIP: BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA
日本で働く欧米人のSM女王様が日本語も出来ないのに人気を得るのは、その大きな体格ばかりでなく、「鞭」さばきの上手さにあるという。欧米では今でも乗馬が学校のカリキュラムとして教えられている国も多い。まるで、日本の学校で柔道や剣道、あるいは茶道が教えられているように、乗馬を仕込まれた欧米人たちが「鞭」さばきに長けているのが当然だろう。また、ヨーロッパの伝統的な娯楽であるサーカスでは、猛獣使いたちが「一本鞭」を華麗に使いこなして、象や虎、ライオンなどを調教してみせている。まさに向こうの連中は、子供の頃から「鞭」に親しんでいるともいえるのだ。
SMのアイテムという以前に、“実用の道具”として「鞭」を認識すること。それが欧米SMにおける「鞭」の存在感を大きなものにしているのだ。
だからと言って、馬や猛獣を叩くように「鞭」を使えばいいというわけではない。そこで登場するのが、ヨーロッパのエリート教育における体罰としての「鞭打ち」である。特にイギリスを中心に良家の子供たちが通う学校では、辱めの意味も含めて、お尻をまくって「ケイン」と呼ばれるお仕置き棒で叩くという教育的な行為が普通に行われていた。その意味で「鞭打ち」は調教であると同時に“教育”でもあったのだ。
さて、それでは「鞭」の調教によって引き出される快感とはどんなものなのだろうか。ピアッサーの間宮英三氏が「ムチのススメ」(『危ない1号』第3巻)という記事で、「軽い刺激から始めて加減を見ながら強くしていき、痛みだけでは辛いようなら性的快楽を適度に味あわせてあげる」と書いている。そして、「鞭」の調教が完成されれば、「痛みを快楽に変えるプロセスが成立すれば、通常のセックスでは体験できない、強烈な快楽を味わうことができるようになる」という。とはいえ、実際にそれほどの領域に入れるM女は、元来そういう素養を持っていることも必要だろう。もちろん、調教師側にもそれなりの「鞭」に対する素養が求められる。
それでも、アイテムとしての「鞭」には、道具そのものにフェティシズムを強く感じる人たちも多いだろう。映画「インディ・ジョーンズ」の素晴らしい「一本鞭」に憧れて、「鞭」にハマったマニアもいるという。
まず「鞭」の一振りとともに、新たな調教の道に挑み、M女の未知の性感を堪能せよ。
●「尻叩き」や「鞭打ち」は厳格な教育法として古くからあった。
●日本を代表するピアッサー、間宮英三氏は「鞭」についても造詣が深い。氏の執筆による「ムチのススメ」(『危ない1号』第3巻)は、「鞭」の種類と用途の分類がなされており、いま読み返しても大変役に立つ。
●例えば、欧米の学校ではカリキュラムとして乗馬が教えられている国も多い。となれば、「乗馬鞭」の扱いもなれたもの。まずは初心者は「乗馬鞭」から、ハンディで当たる場所をコントロールし易いのがいい。「乗馬鞭」に並び、使い易いのが「バラ鞭」。力の強弱が付け易く、プレイのアイテムとしては最高だ。「ペチペチ」という「鞭」が女体で奏でる音に、込み上げる苦痛と喘ぎの声が響き合うのだ。
ケロッピー前田
1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com
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