ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ40
エロ漫画
EROTIC COMICS: BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA
「写真でオナニーする」ことが一つの性のフェティシズムであったように、ここでは「漫画でオナニーする」というフェティシズムについて考えたい。「エロ漫画」が当たり前のように一般化している日本にいると、想像もつかないことかもしれないが、フランスを始めとするいくつかのヨーロッパの国を除いて、世界的にはほとんどの国で、大人が漫画でオナニーするなんて行為は受け入れられていない。だからこそ、日本における「漫画」に対する性のフェティシズムの発見は、オタク・カルチャーを含め、ある種世界に誇る日本文化の特徴なのだ。だが同時に、日本は世界に稀にみる「変態大国」として認知されつつあることも知っておこう。「変態上等!!」と啖呵を切って、「エロ漫画」でオナニーできるのか。さっそく、その深淵を覗いてみよう。
まずはフランスだ。この国と日本の縁は深い。黒船で開国を迫られた日本が、文化的な側面から国際デビューしたのは1867年のパリ万博、日本といえば「フジヤマ」「ゲイシャ」というイメージはこのときに作られた。浮世絵を始めとする日本美術に最初に価値を見出したのもフランスで、当然「春画」などの日本独特のエロティシズムにも接していただろう。実際、フランスは戦後に日本のアニメをいち早く受け入れ、幼少の頃から日本のアニメで育った世代が「漫画」による性のフェティシズムの良き理解者となってくれてきたのは事実だ。
もっと掘り下げるなら、なぜ「エロ写真」でなく「エロ漫画」かということだ。「写真」のリアリティよりも「線画」「線描」による「漫画」の抽象性にこそ想像力をますます膨らませてしまう。そんな傾向は、日本美術における平面的で単純化された抽象性が「日本人には物事はそうのように見えている」と言われていることに繋がる。妄想が理想化された「漫画」という迷宮は、最近では「オトコノ娘(おとこのこ)」という新種の女装趣味まで生み出している。彼ら(彼女ら)は「女になりたい」のではなく、ヒロインとの自己同一化により、「漫画の中の女の子になってヨガりたい」のだ。
今だ他の諸外国では「漫画」は子供向けという認識が根強い。どんなに世界で日本のアニメや漫画が認められても、「漫画でオナニーする」ことが国際的に理解されるには相当な時間がかかることを覚悟しておこう。
●デジタル技術が向上した今、妄想のSMプレイを実写で再現することも可能だろう。それでも漫画が持つ「線画」の抽象性が、脳内のエロのスイッチを入れ、変態プレイの万華鏡を疑似体験させてくれるのだ。
●フィクションのエロ表現をより突き詰めていくと、暴力や殺人といった猟奇的なものに辿り着く。漫画はフィクションであるからこそ、決してやってはいけない禁断の行為や秘められた世界を描くことがかなり許されてきた。
●漫画に発情するような妄想男は、女にとっては不要な存在か。欧米圏のエロ漫画はシニカルだ。
ケロッピー前田
1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com
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