取材:童貞編集者・チェリー平尾
読者の皆さん、こんにちは、童貞です。いまだにフェラはおろか、キスの経験もありません。彼女いない歴=年齢です。
さて、今回は、痴女・ふたなり・高身長・濃厚接吻…など独創的なAVを多数発表してきた現代の巨匠、二村ヒトシ監督のところにお伺いし、ボクの悩みをぶつけてみたいと思います。二村監督は「筆下ろしもの」も得意ジャンルとされてるので、きっとボクの気持ちもわかっていただけるのではないかと…。
では、さっそくお聞きしたいと思います。
「うん、何が聞きたいの? ていうか、何が聞きたいのかもよくわからないんじゃない?」
うっ…いきなり鋭いツッコミです。
「キミみたいに童貞こじらせてると、自分で自分がわからないっていう混乱状態になっちゃうよねぇ」
そ、そのとおりなんですが…。
非常に恐縮ながら、きわめて基本的な「女の子と上手に話すにはどうしたらいいか」といったところからお聞きしてみました。
「なぜうまく女の子と喋れないかというと、『どうせ俺と話しても、女の子は面白くないんじゃないか?』と思ってるからじゃないの? はっきり言えば、実際女の子たちはキミと話しても面白くないと思う(笑)。たとえば、キミには変態趣味はある? 実は女装が好きとか、痴女に犯されたいとか、ウ○コを食べたいとか。ないでしょ。変態には変態の世界があって、そこには変態なりのコミュニケーションがある。変態趣味が会話のとっかかりになるんですよ」
考えてみると、童貞の上にドノーマル。オナニーするときはアイドルの水着で充分(黒川芽衣LOVE)。AVもエロ本も必要ないという有り様です。二村監督がおっしゃるとおり、これでは会話のとっかかりもなければ、話してみても面白味がないんでしょう…。
さっそく核心を突かれて落ち込んでいると、二村監督のほうから「キャバは行ったことあるの?」と質問を振ってきてくれました。すいません、機転の利かない童貞で…。
ボク、風俗はもちろん、キャバクラにも行ったことがありません。正直言うと、なんとなくキャバクラ嬢が不潔に見えるというか、お金を払ってまで行きたいと思えないというか…(キャバ嬢の皆さん、童貞のくせに勝手なこと言ってごめんなさい!)。
「キミが単に女の子と話すことを求めてるなら、キャバに行けばいいだけでしょ。キャバに行けば、女の子と話すことにも慣れるし。でもさ、キミにとって女の子と話すのは苦しいことだし、努力しないとできないことなんだよね。なぜそこまでして女の子と上手に喋ったり、セックスしたりしようと思うわけ?」
あぁ、こんなことを言ったら、二村監督はおろか読者の皆さんにも呆れられそうですけど、ボクは心から女の子とお喋りしたり、セックスしたりしたいと思ってるわけじゃないんです。有り体に言えば─いずれ結婚したいんです。結婚するためにはセックスは必須だし、セックスの前に女の子とお喋りできなきゃいけないし…という流れでありまして。
「それは親からの圧力? 世間の常識みたいなことも考えて?」
まぁ…そうです…すいません…(二村監督の視線が痛いです…)。
「ふぅん。そう考えると、よけい苦しくなっちゃうよね。あのさ、たいがいの男の中には女性性というか、女の子が住んでるものだけど、キミの中にも女の子はいるよね? その女の子はどんな子で、キミのことはどう思ってるの?」
自分の中の女の子!? 言われてみると、確かにそんな存在が頭の中に住んでるような気がします。気恥ずかしいですけど、ボクの中の女の子は─アイドル級の美少女です。清純で、明るくて、黒髪に瞳きらきらで。だけど、ボクのことは好きじゃない…。
「その美少女は、どんな男だったら好きになるんだろう? 女装男子は自分の中の女の子と戯れてるわけだけど、女装男子じゃなくても、自分の中の女の子に好きになってもらえないのは不幸だよ。キミのいい部分もその女の子は知ってるはずだけどねぇ」
ボクのいい部分、ですか…。うーん、好きになってもらえるのかなぁ。自信ないなぁ。ボク、自信がないことについては自信あります(キリッ)!
「なんだそりゃ。もうそれでいいよ(苦笑)。童貞こじらせたやつは面倒くさいな~」
あ…待って! 行かないでください~。まだまだ二村監督にお聞きしたいことが…。
「なに、まだあるの~?」
実は、ボクは草食系男子を自称しながら、「草食系って何なんだろう?」と疑問に思うことがあるんです。草食系とは何かを教えていただけないでしょうか?
「草食系男子には2種類あるんですよ。1つは、自分のことは何でも自分でできちゃうから女が必要ないタイプ。もう1つは、本当は女や愛が欲しいけど、傷つくのが恐いから抑圧してる『愛され待ち』タイプ。ただし、後者の中でも、本当に女が欲しいと思ってる草食系と、前者の『女なんて必要なし』草食系になりたいと思ってる草食系がいる。キミの現状を見てると『愛され待ち』タイプだと思うけど、本当はどうなっていきたいの?」
う~ん…。「女なんて必要なし」って思える草食系になるのが理想ですかねぇ。
「じゃあ、今のままでいいじゃん。童貞のままで。童貞のまま生きていくことが悪いことじゃないし、セックスしなきゃいけないわけじゃない。大好きなアイドルの写真と一緒に一生生きていけばいいよ。それはそれで美しいと思うから」
でも、やっぱり家族を持ちたいんです。放っておいたら、本当にこのまま40になり、50になり、童貞のまま一生が終わってしまいそうで…(涙目)。
「いや、たぶんそうなりますよ。それがイヤだったら、まずキャバから始めてみたら? 毎週1回、必ず別のキャバに行く。もし1つの店で3人の女の子がつくなら、3ヶ月で36人と喋ることになる。キミが今までの人生で口をきいた女の子の数より多いでしょ? やってみなよ」
そ、そうですね…。でも、二村監督、ボクはいずれ童貞を卒業したいと思いつつ、近ごろは童貞にもいいことってあるんじゃないかとも思うようになってるんです。あの宮沢賢治は生涯童貞だったのではないかと言われています。
「どっちに考えるかだと思う。たとえば、外国に行ったことがあるかないかで言うなら、行けば見聞は広まるだろうけど、行かなくても生きていける。人間は外国に行くために生まれてきたわけじゃない。じゃあ、セックスはどうか? 人間は動物だから、セックスする=子孫を残すために生まれてきたんだって考えることもできる。だとすると、セックスせずに死んでいくのは人間として大事なものを得ずに死んでいくことになるよね。でも、そうじゃなくて、『セックスしない』ってことをせいぜい『外国に行ったことがない』という程度のものだとは思えない?」
確かに、そう思えれば気は楽になりますね。きっと全国の童貞諸君も同じではないかと。海外旅行に行くくらいの気持ちで童貞喪失できたらいいですよねぇ。
「だったら、やっぱりキャバから始めることだと思いますよ」
ただ…うまく喋れる自信が…。あぁ、堂々巡りですいません。きっと自意識過剰なのが悪いんですよね…。
「いやいや、10代20代の男子なんてみんな自意識過剰だよ。ただ、キミがキャバに言っても話すことは何もないよね。何を話していいかわからないでしょ? じゃあさ、相手の話を聞いてあげたら? 女の子はみんなナルシストだし、自分に興味を持ってもらうことが快感なんだよ。だから、会話するときに自分の手持ちの武器でどうにかしようなんて思わないこと。これは童貞だけじゃないよ。どんな男でも同じ。自分の話はどうでもいいから、女の子に興味を持ち、話を聞いてあげる。それだったら、キミでもできるんじゃない? って、キミ、やる気ないでしょ…。いっそ王様にでもなれば(笑)?」
いえいえいえ、滅相もございません…。確かに、ボクの自意識過剰の裏側には王様願望があるかもしれません(反省)。しかし、二村監督がおっしゃる「自分の話はしなくていい。相手の話を聞けばいい」というのは目からウロコです。これなら会話コンプレックスのボクでもどうにかできるかも!?
「いや、人の話をひたすら聞くっていうのは、実はとても難しいことだよ。自分をゼロにして相手に興味を持つことがキミにできるわけ? 自分をゼロにして相手に興味を持つことは、実は『愛』なんだよね。愛とは何かというと、自分をゼロにして相手を一番に考えること、相手がそこにいるということを受け入れることです。恋は愛とは違い、欲しがることです。その意味では、ナルシシズムっていうのは自分への恋。日本語では『自己愛』って書くけど、中国語では『自恋』って書くんだよ」
ふっ、深い…。二村監督、すごいです。人の話を聞くっていうのは実は難しいことで、しかもそれは愛に通じることなんですね。
「キミは人を愛する以前に、ナルシシズム=自恋のレベルにいるよね。ちなみに、ナルシシズムと自己肯定は違う。自己肯定は『自恋』ではなくて『自愛』。自分を愛するのは『今の自分のままでいい』って思うことなんだよ」
なるほど。人を愛することと自分を愛することは同じなんですね。その人の存在そのものを認め、受け入れるという。う~ん、果たしてボクにできるんでしょうか?
「さっきから言ってるとおり、キャバに通うことから始めなよ。それが人を愛する訓練にもなるから。3ヶ月間、毎週キャバクラに通う。オレがオレがって自分をよく見せようとするんじゃなく、キャバ嬢に興味を持ち、ひたすら話を聞く。それができたら、次に5万円くらいのソープに行きなさい。いきなりソープに行って童貞喪失しても何にもならないけど、そういうプロセスを踏んだ上でソープに行き、ソープ嬢を相手にしてもキャバと同じように会話ができたら、いつの間にかちゃんとしたセックスができてるはず。それで童貞喪失ですよ! あ~、なんでオレがここまでオートメーション化して教えてやらなきゃいけないんだよ(笑)。童貞って本当に面倒くさいね~」
自信はないですけど、二村監督のお話をお聞きしてるうちに、「これならボクにもできるかも。やってみようかな」という気持ちになってきました。どうしよう…もしかしたらボク、童貞喪失しちゃうかもしれません。
「繰り返すけど、そんなに簡単なことじゃないよ。やってみればわかる。とにかく、行動を起こすこと! あれこれ観念をこねくり回さないで、まずキャバクラに行く。キャバ嬢を目の前にして何を聞いていいかわからなくなったら、『愛って何だと思う?』って聞いてみなさい。女の子たちは自分語りが好きだし、愛についてもいろいろ考えてるはずだから、きっと話してくれるよ。そのとき、決して自分の意見を言わない。数をこなしていけば、話を聞くのもうまくなるし、だんだん余裕が出てきて相手の気持ちまで考えられるようになるから。そうなったら、キャバ嬢だろうと、AV女優だろうと、美少女だろうと、みんな自分と同じ人間だってこともわかるよ」
そ、そうですよね。ともかく、二村監督のおかげでモチベーション上がってきました。真剣にキャバクラという「愛とセックスのスタートライン」に立ってみようと思います。どうもありがとうございました。以上、童貞でした。
二村ヒトシ(にむらひとし)
1964年生まれ。東京都出身のAV監督・AV男優。慶応義塾大学文学部中退。執筆活動も行う。代表作『モテるための哲学』はこの手の指南書の中でも名著として名高い。近著に『恋とセックスで幸せになる秘密』がある。
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