ヒロイン手帖 × 宮島鏡 3

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?15歳の時、塾の女性講師にヤられちゃったんですよ。以来、成人女性とのセックスがトラウマになってしまいました



改めて確認。あなたは本当にロリコンではないのか?


「まず第一に、ロリコンを救いたいというのがありましたからねー。まあ私自身はストライクゾーンが広いんで、『アリスクラブ』も読んでいたけど『熟女画報』も読んでいた。でも、どちらもあまり熱心な読者じゃなかったかもしれない。むしろ『噂の真相』とかね、そういうのを毎月心待ちにしてましたよ」


ネットで24時間展開される掲示板を眺めながら「ロリコン族を救いたい」と思う一方、「こういうヤツらは嫌いだ」という感情も沸いた。


「だらしないロリコンは嫌いなんです。ビデオはこれがいい、写真集はこれがいい、俺はこんな地下ビデオをもってるぞ……とか自慢合戦するのは大嫌い。ロリコンを貴族のように高めたいと思ってましたね。そういうのを目指してましたよ。ワインをたしなむように今日のロリコンはこれがいいなとかね」


二次元で展開される少女世界は嫌いではない。むしろハマッた。


「萌えという言葉は『To Heart』の〝マルチ萌え〟から来てると思うんです。あれが流行ったのが97年から98年にかけて。『カードキャプターさくら』などもそう。そのあたりから〝萌え〟という、にわか知識を持ったロリコンが増えてきた」


そして告白。


「そうですね、どういう少女が好きか、〝マルチみたいな女の子が好きだ〟と書いておいてください」


その頃、宮島氏は10代後半。暗い時代だったという。


「17歳のときに本を出したんですけど、売れなくて。その後大病を患って、歩くことも困難になり。引きこもりみたいな生活をして。それで社会復帰して……」


女に関してもスムーズではなかったという。


「僕は中学高校と男子校でしてね。15歳で大人の女を知ったんですけれども、塾の先生にやられちゃったんですよ。マンツーマン方式の塾で。それはいまでもトラウマになっている。イヤだったんですね。それからセックスは嫌いになった。でも、何回かしましたけどね。何回かしたけど……好きになれませんでしたね」


そこからネット黎明期にBBCやチャット、掲示板といった特殊な人間関係中心の生活。アニメゲームにハマッて、二十歳の時『少女と恋愛する方法』を上梓。


流れだけ追うと、ネット、ゲーム、アニメが生活の中心で、好きな女の子のタイプもゲーム世界のヴァーチャル少女ということで、現代日本のロリコンの王道を来ているようにも見えるが……違うのである。やつらと一緒にしてはいけない。というか、そもそも「二次元好き=ロリコン」という、単純方程式にも反論する。


「だって普通の人だって二次元の女も好きだと思うんですけどね。レオナルド・ダ・ビンチのモナリザだって二次元の女でしょ。そこ、強調しといてください」


確かにそうだ。


「でね、僕はここだけは言いたい。男が年齢に関係なく小さい女の子を好きになるということは、女がラルクのhydeさんとかを好きになるのと同じだと思ってる。大人の男が美しい少女を好きになるということは、大人の女がジャニーズJr.を好きになるのと一緒でしょ。ああいう、小さくて可愛い顔立ちの男の子を。だからショタもロリも根源は一緒。非難されることはないですよ」



?ジャニオタやショタといった嗜好とロリコンは何も違わないと考えています。少女性愛だけが異常だとは思えません 



ロリコンという言葉もなくしたほうが良いと主張する。


「武田信玄の時代だと12?13歳くらいで結婚してますよね。当然、セックスしてる。13歳でセックスしてようが28歳でしてようが、同じコトですよ。ロリコンという言葉をなくしたいですね。僕はあれが好き、これが好きでいいんじゃないですか。ただ、人が嫌がることはやめようと、あくまでも大人の感覚でいいんじゃないですかね。とにかく〝少女に触りたい〟という感情を抑えきれないのは異常ですけど、普通に〝かわいい〟と思うのは当たり前でね」


1999年に成立、施行された児童ポルノ法案は、その後も進化して単純所持禁止まで辿り着こうとしている。


「持つことまで禁止というのは、明らかに異常でしょう。持っているだけで悪い……。持っているだけで捕まるの? それってなに? 覚醒剤と同じ扱いってことですか? 常識的に考えて……普通の人間の判断で考えておかしいですよね。一部の権力者やそれに関わっている人間の感情で、自分の都合で法律を作ろうとしているようにみえる。それこそ犯罪ですよ」


芸術の世界にも詳しい宮島氏は特に違和感があるのだ。


「ゴッホだってピカソだって、きれいだから描いてるんであってね。きれいなものを描いて、そして眺める行為の何が悪いのか。ミケランジェロのダビデ像の丸出しもいかん? 包茎だからいかんと言うわけ?
そういうのもありますね。だから、それくらいの美に関する自由、美を鑑賞する自由を奪っちゃいけないですよ。この国に未来はない」


東京都が進める「非実在青少年」規制も、当然反対だが、ただし……「ボーイズラブは、やめたほうがいいですよ。あれはやっぱりエロ本だと思います、どうみても」


ここで宮島氏は「へへへ」と笑った。意味のある笑いか?


「女の子が読むからエロ本コーナーに置けないのかなと思いますけど、でも中身はエロ本ですからね。何とかしたほうがいい。女の子もエロ本コーナーに入っていける機会を増やすだけで済むんじゃないですかね」


ここでまた「ただし」と言う。


「非実在青少年条例に対する反対運動の仕方には反対ですね。幼稚なのが〝しずかちゃんの裸はいいのか〟とか〝ワカメちゃんのパンチラはいいのか〟とか、実にくだらない話ですよ。低レベルでしょう、反論として。〝この場面で、このストーリーでこうなってしまったことに対して、あなた方、非実在少年条例に反対の方はどう思いますか?〟といった正しい論議がなされてないのが怖いですね。幼稚だなーと思う」


宮島鏡は『少女と恋愛する方法』の後書きでこう語っている。


《その存在(少女愛好者)自体を否定する〈児童ポルノ法案〉が1999年11月に施行された。「児童ポルノを頒布などした場合、3年以下又は300万円以下の罰金とする」という至極当然な刑罰ではあるが、そこにはもちろん「しかし、少女愛好者自体に罪はない」という文字はない。あるのは「少女愛好変態者は牢獄へぶち込め」という思想だけである。しかし、この法案を否定する気はない。むしろ賛成だ。だが、この法案を施行することで少女愛好者が減るということはありえない。同性結婚が認められないこの国に、同性愛者が存在するということでもわかるように、人間の性的嗜好というものは社会の常識などで変えることはできない。それに、それを否定するなら、それこそ人権侵害なのだ─》


宮島氏はロリコン擁護にこだわっているわけではない。しかし、必要とされたらまたいつでも立ち上がるだろう。


最後に、彼は「お詫びしたいことがある」と頭を垂れた。はて?


「『少女と恋愛する方法』は宮島鏡と三田陽子との共著となっていますが、実は三田陽子は存在しません。私がひとりで書きました。罪深く思っている。当時の何万人もの読者の皆さん、ごめんなさい」


ほろ酔い加減の彼はそういって眠りについた。面白い人である。


宮島鏡(みやじま・かがみ)

1979年東京都生まれ。作家・音楽家。高校在学中の97年、『生きる言葉』(葉文社/「関口深志」名義)でデビュー。以降、少女愛と呪いをテーマにした著作を中心にした執筆活動を継続。また98年からローカルTV番組の音楽を手がけるなど、音楽家としても活躍する。

リンク 下板書房

このインタビューは2010年うぶモード9月号の転載です。