都築響一 妄想芸術劇場 第六回

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写真が瞬間芸だとすれば、イラストは独演会だ。

観客ゼロの高座で2時間、汗みどろで語りつづける脳内の発情ランドスケープだ。

写真ページの添え物とさげずまれ、アートともイラストレーションとも漫画とも

認知されないまま、ひっそりと増殖する陰花植物。

欲情の、淫夢の、妄想のもっとも純粋なあらわれとしての、マイクロ・ニルヴァーナ!





# 6  ク ッ ピ ィ  1

1990年の『ニャン2倶楽部』、そして93年の『ニャン2倶楽部Z』創刊当初から設けられ、現在も継続中の投稿イラスト・ページ。先月5回にわたって紹介した「ぴんから体操」をはじめとして、これまで数々の名物投稿者を生み出してきた。そのなかでも「クッピィ」氏は1990年のニャン2創刊時から投稿を開始し、現在もまだ常連のひとりである。20年以上にわたって、ほとんど途切れることなく毎月複数枚の作品を送りつづけてきたという、その驚異的な継続性と投稿量。「伝説」と呼ぶに、これほどふさわしい投稿アーティストがいるだろうか。


ぴんから体操と同じように、クッピィの人物像もまた謎に包まれている。しかし何度も画風をがらりと変え、署名を見なければ同一人物の作品とは信じられなかったぴんから体操と異なり、クッピィは20年間というもの、そのスタイルをまったく変えてこなかった。編集部に残る膨大な量の作品を見直しても、それが20年前のものなのか、先月届いたものなのか、絵柄を見ただけでは判断がつかない。まったくブレのないその作風は、「経験と修練を重ねることによって上達していく」という世の常識とは別次元の、独自に完成された、そして閉じた世界観のうちにある。うまくなることを拒否するアート。それは練習を唾棄し、一生スリー・コードの曲だけを演奏しつづけるパンク・ミュージックのように、きわめてラディカルな精神だ。


やはりぴんから体操と同じように、クッピィの投稿にも裏面に長めのテキストが添えられている場合が多くある。その絵柄とテキストはしばしば、制作当時の時事問題や芸能ニュースを題材にしていて、ある意味、風刺漫画のように読める楽しみも備えている。本誌の掲載時には添えることのできなかった、そのテキストも今回は全文付加し、クッピィのビザール・ワールドを2週にわたってご紹介しよう。




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セクシービームで味をしめた娘はエスカレートし、セクシービーチクポーズ発表、日本流行語大賞をとる。




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イラストの森 陶芸教室にて身をもって教える講師




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天狗きどりで女子フィギュア練習で妨害されたなどとほら吹く女には天狗がほら貝吹いておしおき





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演歌の心を知ったがぶりする黒人は、美人ニュースキャスターにこれでえんかーと、マイクパフォーマンスしながら、はくめいはくめい、パンツはくめいろ新しく覚えたことわざほざく。




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卓球して脱臼してると、エア・ケイがここぞとばからにエアセックスしかける。





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ノロノロしてるのにノロウィルスだけはうつしにくる女には飛行場で手もふれずちんこだけぶちこみ離陸





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松坂とみのもんたの年収10億対談は女をイカせながらのキャッチボールで始まる。



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人の未来はどんどん良くなるとは限らない。レーサー加藤大治郎のように、とつぜん終るもの。せめていい死に方ができるようにと、スズカのコーナーにチンコつっこんで死ねるよう、つっこみレディーをおくことに。




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熱湯風呂がぬるま湯だということを証明して、テレビ業界を凍りつかせた小島よしおは業界から抹殺されると聞き、ぬるま湯でやりたい放題。





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少子化対策の切り札でペットコンでまず犬どうしの気が合うかより人間と交尾するようしつけしてるやついると思います。




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白ヘビの夢みたら3億円当たったという女がうかれてると、白ヘビにはもう一つの意味「災い」があるということをチンコ白くなったヘビとり名人の男が自分の白ヘビぶちこむ。





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新入社員の研修、特に保険屋は体を張る。





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毎年「ベンチャーズ来日」などとおおっぴらに告知してるが、こっちの言葉で「女性器たちがやってくる」という意味だからさあ大変。女かついでタラップからおりてこさせられる。




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日本でどんなヤリマンでも台湾へ行けばスーパースター。しかしどんな場合でも笑ってなければ大バッシング。





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こふんで働くのは古風な女。





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特攻隊で死んだ若者の精霊は盆に蛍になって帰って来るというので、窓開けて寝てると蛍原が一発ギャグかましにくる。





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妄想共和国 現代の春画 ビートルズファンの教師にヘイジュードを教わるところ





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ジャマイカのヤムイモが大ブームになると、足の速い子づくりに現地に行く女がいるはず。





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花見の席取りを関取にさせると、あばれ乳女をつかまえてひまつぶし。





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何度も離婚する男はどこか問題あるか、自分の意見を曲げずに相手を曲げる。





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尖閣諸島沖では何を捕っても許されるという結果が出て、泳いでる女をつかまえに中国からわんさかとおしよせるざま。




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お面を取ると男女が入れ替わるピーターのマジックはテレビ局とグルになった(ビデオをつなげただけ)あまりにもネタがわかるマジックに、ただあきれるばかり。この男は女たらしのタダの詐欺師にちがいない。






都築響一
1956年、東京生まれ。現代美術、建築、写真、デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集。93年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』刊行。96年、日本各地の奇妙な新興名所を訪ね歩く『珍日本紀行』の総集編『ROADSIDE JAPAN』により第23回木村伊兵衛賞を受賞。 97年?01年『ストリート・デザイン・ファイル』(全20巻)。インテリア取材集大成『賃貸宇宙』。04年『珍世界紀行ヨーロッパ編』、06年『夜露死苦現代詩』、『バブルの肖像』、07年『巡礼』、08年『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』、10年『天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~』など著書多数。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続行中。