都築響一 妄想芸術劇場 第二十九回

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写真が瞬間芸だとすれば、イラストは独演会だ。

観客ゼロの高座で2時間、汗みどろで語りつづける脳内の発情ランドスケープだ。

写真ページの添え物とさげずまれ、アートともイラストレーションとも漫画とも

認知されないまま、ひっそりと増殖する陰花植物。

欲情の、淫夢の、妄想のもっとも純粋なあらわれとしての、マイクロ・ニルヴァーナ!






# 2 9 暗藻ナイト



ニャン2には何人もの名物投稿イラスト職人が存在するが、今週ご紹介する「暗藻ナイト」も、ニャン2の長い読者にはおなじみの名前である。


暗藻ナイトの描く世界はSMとスカトロのミックスなのだが、なにより特筆すべきはその圧倒的な画力である。画面の構成、表情の迫力、縄の結び目までおろそかにすることのないディテールへのこだわり、そしてマグマのように噴出する黄金色のウンコ・・・。「玄人はだし」という言葉では物足りない、まさしくプロのレベルのイラストレーションである。


暗藻ナイトは、実は同人誌の世界ではかなり知られた存在だ。それも「女王様とM男」というピンポイントなジャンルで。もともとSM雑誌に投稿していたのが、いつのころからか同人誌を発表するようになり、そのクオリティがマニアたちに認められて、ついには『コミックマゾ』(スター出版刊)などのマニア向け商業誌にまで特集が組まれるようになった。


現在でも彼の作品を追いかけるマニアは多いようで、ネット検索でも暗藻ナイトに触れたサイトや、過去の作品をダウンロードできるサイトが多数ヒットする。日本の「HENTAI MANGA」をダウンロードできる海外サイトにも、暗藻ナイト作品がいくつも存在するから、その人気は国際的なレベルに達している。


こうしたマニアに圧倒的に支持される暗藻ナイトとは、徹底して「女王様に容赦なく虐められるM男」を描く暗藻ナイトだった。しかしニャン2にこれまで送られてきた、暗藻ナイトの作品に登場するのは、男たちに辱めを受けながら絶頂に達してしまうM女ばかりである。これはどういうことなのだろう。人間の中にはかならずS性とM性があるのかもしれないが、それにしてもこれだけ極端な振れかたは、ただごとではない。できることならば、作家本人にいちどうかがってみたいものだ。





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都築響一
1956年、東京生まれ。現代美術、建築、写真、デザインなどの分野で執筆活動、書籍編集。93年、東京人のリアルな暮らしを捉えた『TOKYO STYLE』刊行。96年、日本各地の奇妙な新興名所を訪ね歩く『珍日本紀行』の総集編『ROADSIDE JAPAN』により第23回木村伊兵衛賞を受賞。 97年?01年『ストリート・デザイン・ファイル』(全20巻)。インテリア取材集大成『賃貸宇宙』。04年『珍世界紀行ヨーロッパ編』、06年『夜露死苦現代詩』、『バブルの肖像』、07年『巡礼』、08年『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』、10年『天国は水割りの味がする~東京スナック魅酒乱~』など著書多数。現在も日本および世界のロードサイドを巡る取材を続行中。