器具田こするのオナホール戦記 第六回

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txt 器具田こする教授(Kiguda Lab.)


第六話



■ 「オナホール」のあけぼの


 バブル景気が崩壊した1990年。この時期に人工女性器のマーケットで主流だった電動オナマシンを、手動式のオナホールがどんどん駆逐していった。
 本物の女性器はローターで振動などしない。新素材・熱可塑性エラストマーを使ったオナホールは、手で持って上下に動かすだけで充分に気持ちよくなれるのだ。
 やがて「電動モノに殿堂入り無し」という格言まで飛び出すほど、電動モノに対するネガティブイメージは深まっていく。

 新素材のごく初期は伸び率を売りにするため、挿入孔を細くしてアナルを演出した商品が発売された(「ANUS.H アヌスホール」)。
 淡く紅色のクリア素材で、外から内部構造が見える。20倍に伸びるとの触れ込みで、伸びがいいのに穴は細いもんだからギュッとした締まり感が発生。内部構造は単純な丸棒ネジヒダ。ゾリゾリとした非常に刺激の強いホールだった。
 貫通型で、挿入口にはアナルシワが成型され、反対側はさらに細い空気穴がぽつんと開いている。反対側からの挿入は意図されていなかっただろうが、キツいプレイが可能である。リリース時期はおそらく1988?9年と思われる。



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※ニャン2 1996年2月号 




 このアヌスホールのパッケージは、紙の内箱に透明のプラスチック外装、商品名のシールが貼られた質素なもの。現在のオナホールのようなオカズをイメージさせる写真やイラストはまだ見られない。メーカー名もブランド名もなく、とにかく20倍に伸びるんだ、という訴求だけが印象に残っている。

 その後、1993年あたりにブルセラブームが社会問題となる。ブルセラショップは増えたし、援助交際をする若い女性の存在が注目されるようになった。
 多くのオナホユーザーは、そうしたリアルなモノとは距離をおく傾向にある。
しかしブームに乗じただけのオナホール「あこがれのセーラーちゃん」シリーズがリリースされると、多くのユーザーの支持を集めた。


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 パッケージの女の子「セーラーちゃん」は当時としても落書き感の漂う画風ながら、明らかに2次元ヒロインをフィーチャーする現在のオナホ様式の源流である。特別編の「DX」を含めれば7種類の展開となった。
 中身の形状はパッケージとは無関係で、パート3はブルセラのかけらも感じられないバラっぽいの花のつぼみだ。内部構造的には、パート1?6が貫通型のストレートネジヒダ。DXは非貫通で、それ以前のシリーズよりもかなり柔らかい素材配合。多少円錐状の内径ゆらぎがあるストレートネジヒダであった。
 イボや特殊形状ヒダはすでにソフビ時代から存在した。どういうわけか、この頃はストレートネジヒダが強く推されている。
 たしかにオナホ構造の基本なので、ひどい地雷ホールにはならない。しかし本体が保守的になるとパッケージの勝負だけになって、つまらないものだ。



■ オナホ屋はゴム屋ではない


 パッケージ勝負の定番、アニメのパロディホールも出始める。1995年にエヴァが放送されると、パロディホール「新性器 EROS」シリーズが出た。1995年といえば、ラブクラウドのロングセラーオナホール「東京名器物語」のリリースもこの時期である。こちらのネーミングはトレンディドラマのイメージからと思われる。

※ ネットに放置された初期のオンラインアダルトショップで90年代後期の商品が見られる。商品によっては現在違法なものもある。http://www.pantah.20m.com/toys6.html

 本体の伸び性能だけが売りだった時期から、オカズイメージ重視へのシフトである。そして単にセーラー服の女の子というイメージだったのが、具体的なアニメキャラクターのホールへと研ぎすまされていく。マーケティング論でいう、シーズ・ニーズ・ウォンツモデルの実践とも言えるだろう。

 オナホはもはや単なるゴム製ちくわではいられなくなったのだ。

 現代のオナホ産業はゴムを加工する第二次産業ではない。イメージを演出して物語を編み、人工の性体験という無形財を提供する第三次産業なのだ。


【1990年のホール構造】

 この時代、オナホールを成型する側の都合もさることながら、ユーザー側も使用後に洗浄することを考えれば直線的なヒダで貫通型が自然だと考えられていた。非貫通によるバキューム効果も重視されていなかった。
 西洋市場では、フレッシュライトなど現在も貫通型が主流である。ちなみに中空成型が得意なソフビ時代は、ホール部をペラペラな靴下状に作り、別成型で作っておいた外性器から恥丘部に接着したものが多く見られた(「名器昇天」など)。

※靴下的な構造のローター付属ソフビ製オナマシン「名器昇天」
http://www.kiyosan.co.jp/goods/k-m2.html


【告知!!!!!!!!!!!】
Powered by Kiguda Lab.!!!!! 東京・中野のアダルト店ホットパワーズ
(http://www.hotpowers.jp/)にて、器具田研究所の技術提携によるオリジナルオ
ナホールが2012年5月23日に発売予定です。「追想螺旋夢霧 双奏ノ調」と書いて
「ダブルスパイラル」と読ませる厨二なネーミング。マッタリ系新感覚素材で
ぎゅいんぎゅいんだよ! 手持ち型で国内最大サイズ・最複雑構造を誇る、オナ
ホ上級者向け&デカチン向けのクレイジーなホール。よろしくね!



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著者紹介

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器具田こする教授


マッドサイエンティスト。ドールとホールのR&Dアートユニット「器具田研究所」を主宰。隠匿野外自慰器具「オナーパンツ」でオナニーの世界に革命を起こし、複雑系ホール構造やオナマシン設計などアダルトグッズのテクノロジーを追求し続けている。「ゆっくりしていってね スローオナニー入門」(コアマガジン)でCEOを担当。発音は「きぐた」ではなく「きぐだ」と濁る。

webサイト http://www.kiguda.net/
Twitter @kiguda








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