txt 器具田こする教授(Kiguda Lab.)
最終話
■ オナホ女子の台頭
ここ数年のオナホのカジュアル化は、女性の「浮気」概念を変えたと言われている。
それまでは男性がオナホを使うのは浮気に準ずる悪だったのに、今では目の前で射精することを条件にオナホ使用を許す。つまり「目の前で出された精液は、目の前のわたしのためだから、うれしいこと」という理屈らしい。そんな射精の瞬間を見たい女性が増え、でも自分の女性器を使わせるのには抵抗があるため、オナホを男にプレゼントするのだという。射精の瞬間を見るために、オナホはクリア素材が好まれる。
これは1980年代までの、女性を責めるためにバイブを買う男性の反転と見ることができる。そもそもバイブからオナホにアダルト商品の主力が移ったのは、不景気により男女交際のハードルが上がり童貞市場が拡大したからだが、女性側もオナホにあこがれて「入れるものが付いてない」と悔しがる状況となっている。
中には、ディルドーとオナホを両方買って人工物同士を対戦させて喜ぶ女性の存在も報告されている。このマーケットはまだ未知数であるが注目に値する。
■ メーカーが流通に隠される
アダルト商品の問屋は、昔から中抜き直販の防止を目的として、商品パッケージに連絡先を書かないようメーカーに求めている。古くからあるオナホールがメーカー名すら無かったりするのはそうした事情からだ。
アヌスホールもセーラーちゃんも新性器EROSも東京名器物語も、パッケージにメーカー名は一切書かれていない。
TENGAの松本社長は起業にあたって「工業製品なのに説明書もチラシもなければ、問い合わせ先もない。これはいっぱいやることがある分野だ」(「サイゾー」2008年12月号)と発言している。
2012年現在でもなお、連絡先すらパッケージに書かない・公式サイトに載せないアダルトグッズメーカーは、流通業者の強固な支配下、専任契約下にあると見てよい。
現在ではそれがむしろ販路を狭めていて、商品の特性上、従来の問屋ルート・小売店を使わずAmazonを使い、自前でECサイトも立ち上げて直販するほうが有利との見方もできる。オナホ屋はイメージや夢を売る商売であるなら、ネット上での演出も大いにやればいい。常識的に、アダルトグッズは店舗で買うよりネットで誰にも知られずにポチる方が多いだろう。
実際、Amazonで売るために自社でJANコードを取得し、直販のためにきちんと連絡先を書く、それでも扱ってくれる問屋には適正なマージンで卸す、といった真っ当なメーカーも現れてきた。
市場プレイヤーの多くは互いにメーカー兼問屋・小売りであるために、抵抗勢力はそのメーカーに対して、自社の人気品薄商品の手配を遅らせたりする云々と、圧力なのか邪推なのかわからない話も聞こえてくる。業界全体の拡大を思えば無益なことだ。
そんな中、オナホをまともなビジネスにするため、協力し合って市場を盛り上げようとする機運が中堅メーカー、ショップの間で徐々に高まっている。
まずは消費者とのコミュニケーションだ。
■ オナホ軟式アカウントとは
Twitterのユーザ数がキャズムを超え、インフラ化した2010年。TENGAが公式アカウントを開設。前後してマジックアイズ、翌年にトイズハートなどが参入した。
オナホメーカーのアカウントはユーザーにとっても安心感につながり、良い遊び相手になっている。アダルトショップのアカウントも巻き込んで生ヌルい空気が漂う。有名メーカーが互いの商品を宣伝・リツイートしあう様は、スポーツのエール交換よりも奇異で面白い。
中でもラブクラウドのアカウントは異彩を放っていた。2011年、東京名器物語の累計50万個売上を記念して登場したもので、設定されたキャラクターは「豊臣守メサイア子」、略してトメコといういじられキャラであった。ラブクラウドにはもうひとつ、「桜吹雪」というマスコットのアカウントがある。
TwitterにはNHKやまんべくんなど「公式」とは言い難い、宣伝よりも中の人の親密さをアピールするくだけた広報手法、いわゆる「軟式アカウント」が存在する。トメコも軟式の流儀でネタツイートをするのだが、18歳のOLという設定なのに中の人は自身のオッサン臭を微塵も隠そうとしない。
彼はラーメン好きと大喜利体質で知られ、
「50万個販売達成の大人気オナホール『〇〇〇〇〇〇』の〇の部分を穴埋めし、ハッシュタグ#TOKYOmeiki を付けてツイートしてください」
とツイートしたところ、「東名高速物語」「東京ラブストーリー」などとリプライされ、意図せず大喜利化。プチブレイクした 【エロ注意】東京名器物語大喜利 #TOKYOmeiki。
またステルスマーケティングが話題になったとき、便乗して東京名器のステマを募集したところ、TENGAが乗り込んできて
「TENGA社員は仕事オナニーではTENGA、プライベートオナニーでは東京名器を使っているそうです。」
とツイート、業界全体も大変に盛り上がった【デマネタから】 #ステマするから東京名器くれ 【動画まで】。
そして知名度を上げた絶頂期のトメコは、自身の名を冠した新作オナホ「TOMEKO」をプロデュース(http://www.lovecloud.jp/tomeko/)。
しかし軟式は所詮軟式である。ツイートで直接売上が伸びるわけではない。トメコ上司の評価は散々なものだったらしく、2012年5月末でプッツリ、ツイートが止まってしまった。
今でも「TOMEKO」の商品サイトに行くと「トメコとは何だったのか」と大きく表示されている。
無茶しやがって。
ありがとうトメコ! そしてさようならトメコ!!
オナホ業界には、戦記として残していくべきエピソードがまだまだ埋もれている。オレたちのはてしなく遠いオナホ坂は始まったばかりなのだ。
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(http://www.hotpowers.jp/)にて、器具田研究所の技術提携によるオリジナルオ
ナホールが2012年5月23日に発売予定です。「追想螺旋夢霧 双奏ノ調」と書いて
「ダブルスパイラル」と読ませる厨二なネーミング。マッタリ系新感覚素材で
ぎゅいんぎゅいんだよ! 手持ち型で国内最大サイズ・最複雑構造を誇る、オナ
ホ上級者向け&デカチン向けのクレイジーなホール。よろしくね!