老 舗 と 新 興
―本日はAV業界のメジャーとインディーズ双方を代表する痴女系AV監督であるお二方にお越し頂きました。この鼎談の大きなテーマとして第一に「痴女」というキーワードがあるのですが、まずは手慣らしにということで、AV界のメジャーとインディーズ間における作品制作上の違いについてお伺いしてみたいと思います。では先にメジャーの大熊監督から、いかがですか?
大熊(以下、大) 僕がAVを始めたのは随分前…、もう18年前ですからね。その頃はまだセルビデオの畑が殆どなかった頃ですから。その頃の違いというので言えば、まぁモザイクの差というか、規制の差が大きかったですよね。ただ今は相互にもうそんな差がなくなってきてるんじゃないですかねぇ。
― メジャーとインディーズという図式自体が形骸化してきているというか?
大 そうですね。
― 淫語とかの制約も今はあまり変わらないんですかね。
K★WEST(以下、K) そこは殆ど変わらないですね。
― 一般的にはメジャーがレンタルでインディーズがセルという認識があると思うんですが、レンタルか
セルかといったことで作品作りに影響はあります?
大 うーん、どうでしょう。セルかレンタルかというより、昔からやってるかやってないかじゃないですかね。
― なるほど…。
大 例えばクリスタルは昔からあるレーベルですから、あまり冒険的なことをしなくていいんですよね、というより冒険はしたくないんです。分かり易く言うと捕まりたくない。比較的に新しい会社は割にイケイケですから、捕まってもいいやという感覚もちょっとあるんじゃないですかね。
― K★WEST監督はどうお考えですか
K 僕は…なんだろうな。逆にどういうものがメジャーなんだろうって思いますね。昔で言ったらモザイクが大きいとか小さいとかそういう分かり易い違いがあったけど、ビデ倫とかもそうですよね。だけど今はレンタルメーカーとして知られてるレーベルなんかもすぐにセルに出したりしてるし、だから僕も殆ど変わらないのかなって思いますね。
― メジャーとインディーズという形式上の違いはあっても、その差はあってなきがごとく、といった状況なんでしょうか。
大 そうですね。逆に売上げの高さでいったら今はセルの方が高いんじゃないですかね。だからメジャーとインディーズっていう括り方よりも、老舗と新興勢力みたいな構図なんじゃないですかね。
― なるほど。
K そうですね、そんな感じがしますね。
― ちなみにクリスタルさんは創業何年になるんですか?
大 25年くらいですね。この前25周年記念ビデオなんか出してましたから。
― ドグマさんはどれぐらいですか?
K 僕はドグマの社員ではないんですが…、ドグマはおそらく10年足らずじゃないですかね。ソフトオンデマンドで作品を多数撮ってたトウジロウ監督という方が独立して立ち上げたメーカーがドグマですから。
― K★WESTさんは割と様々な会社で作品を撮られていますけど、やっぱりドグマさんくらいの歴史の新興メーカーが多いんですか?
K HMPさんみたいな息の長い会社で撮ったりというのもありますよ。この前、HMPさんの企画で初めて一本撮ったんですが。
― 違いはありました?
K 僕もずっと新興勢力的なところ、モザイクも薄く規制も緩いといったそういった中でやってきて、レンタルメーカーは経験なかったですし、会社の方に「撮り方とか希望ありますか」とか「エグくないほうがいいですか」とか聞いたんですけど、特にないですって言われて。もう今はメーカーの社員自体がセルとかレンタルとかビデ倫とかうんたらとかってのは関係ないっていうスタンスですよね。多分、作ってる人達は誰も意識してないんじゃないですかね。
大 老舗か新興か、ですよね。
― ところで、大熊監督はキャリア18年ということなんですが、K★WEST監督はどれくらいになるんですか?
K もうちょっとで10年ぐらいですかね。
― ここ10年間で変化ってありました?
K そうですねぇ、まぁとにかく色々なメーカー、レーベルが増えましたよね…、景気がよくないのかな(笑)
― (笑)。景気の悪化は肌で感じたりします?
K やっぱり昔の方がフリーの監督さんとかももっと儲けてたんじゃないですかね。
大 結局はAVを見る人のパイっていうのはある程度決まってるんですよ。一方、会社は増える一途なんで…、当然のごとく取り分ってのは減るわけですよ。
― なるほど。
K とにかくAVが増えたし、それに女優さんのレベルが凄い上がりましたよね。それに作品の作り方も丁寧になってきてる。
写真手前が大熊金太郎氏、奥がK★WEST氏。
―確かに女優さんのビジュアルの著しい向上はいち視聴者としても感じるところですね。最近ではパッケージなんかもお洒落なものが増えてきてますし。AVなのに部屋に飾ってもかっこいいみたいな。
大 ありますよね。ファッション雑誌みたいなパッケージ。やっぱああいう方がいいんですかね、視聴者の皆さんは。
―どうなんでしょう、エロ本にも似たような葛藤はありますけど。表紙から露骨な卑猥さを出していく方がいいのか、あるいはややトーンを抑えて、よりお洒落なものにしていったほうがいいのか。
K 難しいとこですよね。
― 若い世代なんかだと露骨なエロ表現はトゥーマッチって思われちゃうのかもしれないですね。ちなみに表紙っていうのは監督さんの意向で決まっていくんですか?
大 いや、どちらかと言うと余りタッチしませんね。
K 僕も今はあんまりしないですね。
― なるほど…、素人質問で申し訳ないんですが、AVにおいてはどこまでが監督さんの仕事だとかいった線引きは明確に引かれてる感じなんですか? 例えば大熊さんの作品などを見ると割とドラマ的要素が強いじゃないですか。あの脚本なんかは監督さんが書かれてるんですか?
大 いや、もうあれですよ。女の子に合わせてですよ。クリスタルの場合なんかは会社が女の子のキャスティングをするんです。だから現場に来るまで誰が来るのか分からない。まぁ、分からないは大袈裟にしても、せいぜい分かるのは名前だけでどんな子かは知らないんです。だから、現場で初めて会って、まずお話をして、この子はどんな事ができる子なのかなとか考えて、その場でストーリーを作って、なおかつその子が演じやすいように色々と状況を整えていく。だからこういう台詞を言えみたいな具体的な注文はしてないですね。
― そうなんですね。ざっくりとしたプロットというか流れを説明するだけ?
大 そう。それに女の子が持っているものを引き出した方が視聴者の方も喜ぶんじゃないかなって思ってるんで。あんまり細かいところまで演出や脚本を詰めないようにはしてますね。まぁ、上手い女優さんであればその上手さを楽しんでもらい、逆に下手な女優さんであればその下手さを楽しんでもらうぐらいの勢いでやってます。こんな感じで今日はいきましょうみたいな。
― それは意外ですね。
大 一番注意してるのはそのノリを引き出すにはどうすればいいか。雰囲気作りであったり話の持っていき方であったり。
― なるほど。K★WEST監督の作品では、僕は主に『宅配痴女』シリーズや『チンポコマグニチュード』シリーズなどを見せて頂いたんですが、あまり込み入った設定や脚本など、ドラマ的な展開はないじゃないですか。そこにはK監督自身のこだわりや好みがあったりするんですか?
K まさにあのシリーズだと大熊さんのやり方に結構近いと思いますね。あと僕は男の人がちゃんとノレるかってことを考えたりしますね。痴女ものなんで男が感じてる方が面白いなって思うんですよ。で、男が感じている状況に女の子もノってこれたらいいなって考えてるんで。だから男優と女優の相性を見て、この人とこの人だったらこういう風にしたらいいとか、こういう風な流れにした方がいいとか、おおまかなことを決めて、あとは撮影の流れの中で僕がちょいちょい指示を出していく感じですね。こんな台詞を言ってとか、こうしてああしてとか。
― Kさんは素人男優もかなり使われてますもんね。素人ゆえの難しさってあります?
K 素人の方は男優としてのスキルが全くないので、まさにどれだけ気持ち良くなってもらえるかってことになってくるんです。ドグマの場合は前もって痴女ができることが分かってる女優さんしか撮らないんで…、そこは大熊さんとは少し違いますけど、だから逆に女優さんは男優扱いに近いかも知れないですね。こういう風に責めてってくださいとかを女優さんに指示していって。素人さんは女優さんよりもナイーヴなんでね、勃つ勃たないもそうですし。女優さんはそれほど感じなくてもセックスが成立したりはするんですけど、男は外部環境や気持ちの状態次第では、まず勃起しないですからね。男が勃起してないと画としては非常にサムいですし。フニャフニャのチ○ポをしゃぶりながら女優が「どう、気持ちいいでしょ」って言っててもねぇ(笑)
― (笑)。見てる側にもばればれですからね。
K そう。だから男の方を興奮させないと。
― 細心の注意が必要なんですね。
K まぁそこが面白いところでもあるんですけどね。すぐ射精しちゃったとかね。
― スリリングですね。
大 そういうところも込みで視聴者の方に楽しんでもらいたいですよね。
― 大熊さんは素人男性を撮ったりっていうのはあります?
大 そういう企画も昔は撮りましたね。だからその苦労も分かりますよ(笑)。痴女ものを撮るにあたっては、K★WESTさんも仰っていたように、男優が重要なんです。やっぱヤラれ方が上手くないとモデルもノッてこないし。
― それは撮影時においてのみではなく作品として見た時も?
大 そうですよね。結構重要なんです。
― エロ本の企画でも読者参加企画なんてのをやったりしますけど、確かに素人の方を撮影するのは難しいですよね。まずなかなか勃起しないですから。
K そうですよね。日常では風俗とかでも二人っきりじゃないですか、もちろんプライベートでも二人っきりですし。一方、撮影だと周りはスタッフ含めて男ばっかりじゃないですか。大勢の男に見られながら勃てるってのは大変ですよね。
― 視聴者としても男性の台詞や挙動は結構重要に思いますね。それ次第でノレるノレないが決まってくるとこありますから。
大 だから僕なんかはまず男優の教育から始めてますよ(笑)
痴 女 映 像 論
― そろそろ作品論、痴女論に移っていきたいと思います。まずK★WEST監督の作品ですが…、K監督自身、さきほど痴女の出来る女優を選んで使っていると仰ってましたが、例えば『宅配痴女』などの作品では、作品内の会話において監督が女優さんに「今日は痴女ものです」といった説明をなさっているじゃないですか。つまり「この女優さんが今日は痴女になります」といった演出がなされている。
K そうですね。
― 一方、大熊監督の作品は女優性はそれほどフィーチャーされていませんよね。僕は大熊監督の『私は痴女』というオムニバスシリーズを幾つか拝見させて頂いたのですが、いずれも6人くらい女優さんが出演されてらっしゃいますが、みな一様に濃いルージュを施されていて、あるいはハイヒールを履いていてといった記号化された痴女表現になってる。そんなザ・痴女が突拍子もないシチュエーションで登場し男を緩くレイプしていくといった、まるで男の幻想をそのまま映像化したような作品だという印象を受けたんですね。
大 ファンタジーですよね(笑)
― ですよね(笑)。一方、K★WEST監督はそういったファンタジーははなっから排してあって、女の本性なんてものは度外視した作品形成をされてる気がするんです。だから「今日は痴女で」という台詞まで収録されてるんじゃないかな、と。この点において、お二方の作品は非常に面白い好対照をなしている気がするんですよ。
K まぁ僕もファンタジーみたいのも作ったりもするんですけど(笑)、まぁ最初に言えるのはメーカーの性格がありますよね。『宅配痴女』シリーズを出してるドグマっていうのは割と女優さんの存在を売りにしているというか…そこそこ有名な単体女優の方が出ていて、その人のキャラを押していくっていう部分があるんです。あと個人的な考えとしては、痴女性っていうのは女性なら誰しもがもっているものだとも思うんです。本来はSとかMとか関係なく誰でも痴女にはなれる、だから、それを見せてもらおうって感じですね。最初は「わたしは痴女なんてできません」とかいう子でも、いざその状況を作れば意外と痴女っぽくなったりするんです。だから僕はその人の持っているものを引き出している…っていうと偉そうですけど、まぁ見せてもらっているという感覚ではあるんですね。
― なるほど…。
K あるいは素の状態とエロい状態のギャップを観てもらうっていうのもいいかなと思いますね。こういう感じの人がこんな感じのエッチをしちゃうんですよ、みたいな。だからどちらかと言えばリアル路線でいきたいなという気持ちはありますね。
― 好みとしては、ということですね。僕も『宅配痴女』を見ながらずっと勃起していたんですが、非常に入っていきやすい作品という気がしました。ところで、ここで是非とも聞いてみたいんですが…、お二人には個人的な痴女観、あるいは理想の痴女像みたいなものってあります?
大 そうですねぇ…、とりあえず性欲に溢れてる人ですよね。あとは気が狂ってて欲しいですね。
― 本当の淫乱症というか病的な色狂いというか…。
大 ちょっと頭がおかしい人が好きなんですよね、僕(笑)
― 『私は痴女』内の痴女の設定とか訳が分からないですもんね。男友達数人で家で遊んでたら不意に押し入れからランジェリー姿の痴女が現れるとか…(笑)
大 あぁ、ありましたねぇ、そんなの。
― あれはやっぱり大熊さんの好みの状況なんですね。
大 そうですね、最近はインターネットも普及していて色々と情報があるからあれですけど、昔は痴女って言えば都市伝説的な存在だったんですよね。そういうものが存在するんじゃないか、みたいな。まぁ口避け女みたいなもんですよ。東京で夜に街を歩いていると遭遇するかもしれないみたいなね。
― 確かに『私は痴女』の中で痴女たちが登場するシチュエーションって都市伝説的ですね。公園を歩いてたらいきなり絡まれたとか、会社で一人で残業していたら突如として現れただとか。
大 昔、雑誌の体験記事なんかにもあったじゃないですか、「突然、電車の中でチ○ポ触られてしゃぶられた」みたいな話。今はあるんですかね、そういう話は。
K いや、あるらしいんですよ(笑)。僕は応募してきた素人の男性を撮ったりしてるじゃないですか。その一人から聞いたんですが、なんでも埼京線で知らない女性に触られてそのままパンツの中に出しちゃったとかで、まぁすごい早漏の男なんだけど。
大 いい目にあってますねぇ。僕はそういう都市伝説みたいなのを作っていきたいですよ(笑)
― 痴女ってそもそも痴漢の男版って意味ですもんね。そう考えると電車内に痴女の起源があるって考えることもできますしね。
大 そうでしたよねぇ。いまやかなり変形してしまっていますが…、まぁ電車は撮れませんからね。
K でもいいですよねぇ。電車に乗ってたら触られてイカされちゃうなんて、男の願望ですよね。
大 夜に酒を飲んで歩いてたらランジェリー姿の女が公園にいるみたいな、そういう東京であって欲しいですよね(笑)
― (笑)。あと大熊監督の作品を見ていて思ったんですが、まず痴女とヤラれる男性との関係性が極めて希薄ですよね。
大 お、よく分かってますね。
― それがきっと痴女なんだろうなって思って。だから「押し入れから現れる」というのは最も理想的な痴女出現のシチュエーションなんだろうなと。
大 そういうことになりますよね(笑)。関係性があるともう駄目なんですよ。
― そうですね。そうなっちゃうとまた何か違うジャンルに該当してしまう気がします。
K あぁ、なるほどなぁ。
大 僕は『人妻痴女』というのも撮っているんですけど、人妻を表現するためにはある程度は関係性も作らなきゃいけない。それが悩むんですよね。どうしたらいいんだろうと…
― まだ『人妻痴女』の方は見ていないんですがタイトルは知っていて、『私は痴女』を観た後ということもあり一体どう撮ってるんだろうと気になっていました。
大 だから無理にでも関係性を作っていくしかないですよね。でも薄い関係にはしてあります。ちょっと知ってる程度の間柄にして。
― なるべく情報は少なく、ですね。
大 女優さんが若いですからね、多少説明しとかないと人妻ってのが伝わらないですから。難しい所です。
― じゃあ『私は痴女』シリーズに関しては大熊監督の痴女幻想がそのまま表れているということですかね?
大 そうですね、ただあれの難しいところは、さっきも言いましたがうちは現場になるまでどういう子がくるか分からないので、「私は痴女なんて無理です」って子もいっぱい来るんですよね。
― (笑)。それって会社はどうなってんですか? 一応、痴女もの撮るのはあらかじめ分かってるわけですよね?
大 まぁ、女優さんたちもね、面接では「できます」とか言ってたりするんですよ。で、いざ現場に来て「できない」っていう。それが一番最悪ですよね。あちゃぁって。
K それは厳しいですね。
― 痴女ができないっていうのは要はどういうことなんですかね? なりきれないってことですか?
大 なりきれないというより、自分のもってるものを出せないんですよね。なんか色々と障害があるんですよ、脳が痴女をだすのを邪魔する障害が。
K 基本的に女の子って受け身の方が楽だし気持ちいいから、普通にやればそうなっちゃうんですよね。わざわざ女の子がマ○コを自分でグチョグチョやりながら「いれてぇ」とか言って…、それって要は男に何もされていない状態から興奮していなきゃいけないわけですよ。そのテンションにもっていけるというのは女優さんとしてのキャリアや、あるいはもともと痴女の素養があるとかでない限りね。大体の女性は待っている側だから、男から責められるのを。
― 基本形はそうですよね。
K だから結構恥ずかしいことだと思うんですよね。女の方から「チ○ポ欲しいの」とかいって自分から求めていって「やめてよ」と逆に男に言われる。それは普通の女性にしたら結構キツいですよ。
― そう考えてみればそうですね。今は痴女もののAVやエロ本などで見慣れてるせいか、ごく自然に痴女的な女性を受け止めてましたけど。
大 なかなかできない時が大変なんですよね。女の人にはあるんですよね、頭の中のブロック、本性を隠すブロックが。それをこう解体する作業が始まっていくんですよね。本当はこうなんじゃないの、とかね。
― なるほど…、女優をほぐしていくのも監督の手腕一つなんですね。
K そりゃそうですね。
大 あと、そういう時に助けてくれるのが男優さんの存在なんですよね。男優さんがヤラれ上手だと、女の子もノッてくるみたいなね。
― 今回、比較対象として他の監督さんの痴女ものAVなんかも幾つか見させて頂いたんですが、監督さんや男優さんが違うだけで、痴女という存在そのものの印象がかなり変わってきますね。台詞一つとってもそうですし…
K 変わりますね。
― 本来、逆レイプくらいが按配としては丁度いいんですかね。
大 逆レイプって言い切っちゃうとどうかなとは思うんですけど、言葉で定義するのは難しいところですよね。でも僕の場合、最後はエロくなればいいかなとも思いますよね(笑)
― それは極論ですね(笑)
大 あまりしっかりと型を決めてしまうと、その型に当て嵌まらない女優さんなんかが来た時に対応できなくなってしまうんですよね。最後のおちどころはエロきゃいいかなみたいな感覚がないと、対応できないですからね。
― 確かに作り手としてはそうなりますよね。K★WEST監督は先程、例えば『宅配痴女』シリーズなどに関しては女優さんのもっているものを引き出すと仰っていましたが、撮影云々は抜きに個人的な理想の痴女像のようなものはあります?
K 理想の痴女ですか…、なんだろうなぁ、いきなり現れて、なおかつマ○コはすでにビジョビジョで、しかも美女みたいなね。外見上はいい女なのにとことん下品みたいなのが理想の痴女じゃないですかね。
― なるほど…、そうなると突発的に現れるという点は割と共有されている痴女幻想なのかもしれないですね。
K こと痴女に関してはそうだと思いますね。僕は大熊さんよりもざっくりしてますが、つきつめれば「積極的な女の人に迫られたい」っていう気持ちがありますよね。それは相手が学校の先生でもいいですし、人妻痴女でもいいですし。究極言ったら見知らぬいい女といきなりヤるってことですよね。
― じゃああえて一つシチュエーションを限定するとしたら?
大 それは難しいですねぇ…、もう結構撮っちゃってますからね(笑)まぁ、でもやっぱあれですかね、寝てる時に来てもらうってのがいいんじゃないですかね。逆夜這いみたいなね。こっちリラックスしてるしさ、朝起きたらあれは夢だったのみたいなぐらいの勢いで。あれ、俺は夢精してたのかみたいな。
― 夢かうつつか、ぐらいの感じで。
K 僕はオナニーが好きなんで、部屋でオナニーしてたら窓から隣の家の女の人が俺がチ○コしごいてるとこを見て「なにやってるの?」とかなんとか言ってガラララって部屋に入ってくるみたいなのがいいな。
― 古い(笑)
K で、俺は「なんだよ」とかって言いながらも、ちょっとチ○ポ触られたり匂いとか嗅がれたりして、そのままハメられちゃうみたいな…、そういうのがいいですね(笑)
痴 女 幻 想 論
― SかMかっていう大別はしっくりこないかもしれませんが、お二人は普段の性癖はどちら側です?
大 僕はぜんぜん責める方ですね(笑)
K 僕はどっちもですねぇ、現場で痴女ものを撮っているとSって言われることの方が多いですけど。
― なるほど…、てことは割と責めるのが好きなS的男性においても痴女幻想は別腹的な感じであるんですね。
大 そうですねぇ、皆あるのかは知らないけど。僕は最初「痴女ものを撮って欲しい」という依頼があって勉強したんですよ。はじめは自分は痴女は撮れないと思ってたんですけど、まぁ色々と学んでいくうちに分かってきた感じですかね。これが痴女だみたいなのがね。でもKさんは見た目がSですよね(笑)
― 確かにその胸毛を見せられてMだと言われても(笑)
K (笑)。やっぱあまり女性に高圧的にこられるとムッとはしますよね。
― 痴女は飽くまでも幻想の中だからいいってことなんですかね?
大 どうでしょう、僕なんかはこうキャパシティが大分広がったんで高圧的に来られても構わないとこありますけど(笑)
― それはそれで大丈夫っていう(笑)
大 僕が痴女ものを撮りだした頃ってのは痴女男優というのが世間にいなかったんで、しょうがないから自分がハメ撮り男優も兼ねていたんです。で、やってる内に痴女られる側の気持ちも分かってきたというかね。15年前ぐらいですからね、痴女ができたのっていうのは。
― 割と新しいんですよね。
大 そう。だから僕が始めた頃っていうのは手本となるものも余りありませんでしたから、どうやって作っていけばいいのか分からないまま手探りでやってて。
― 我流痴女ですね。男優をやっていた頃は痴女男優らしい言葉使いをされていたんですか?
大 そうですねぇ。
― 意外とそういう照れはないんですね。
大 いや、実際はありますよぉ。ただ照れてたらできないですからね。
― K★WEST監督はハメ撮りは?
K 僕は一度もないんですよ。
― ということは女優さんとハメたことはない?
K 女優とハメたことは一度もないですね。
― ほぉぉ…。
K ほんと監督業のみですね。せいぜい撮りながら近付いて煽ったりって程度。殆ど僕はナビゲーターですから。特に痴女ものに関しては、始めはナビゲーター的感覚で指示を与えたりってしますけど、撮影がいざ始まれば空気のような存在になってますね。男優と同化していくみたいな感じですね。
― あえて空気化していくということですもんね。
K そうですね。あと僕がこの業界に入った時はすでに痴女ってものがあったんですよね。僕は業界に入って初めて痴女ってものがあるのを知って…、ビックリしましたね、こんなものがあるのかと。女が積極的に上に乗って腰振ってるよみたいな。今までAVとか見ても、まぁ普通のセックスにおいても、男が能動的、女が受動的というのがポピュラーでしたから、まぁ衝撃的でしたよね。だから、僕は「これが痴女だ」みたいなものを最初に見せられた世代なのかもしれないですね。
― でも…、逆に不思議ですよね。ほんの十数年前まで痴女というものが少なくともAV上には存在しなかったというのが。発想としては非常にシンプルじゃないですか。女が男を襲うというのは。
大 痴女って言葉自体はあったんですけど実際に使われることはなかったんですよね。僕の記憶が正しければ、15、6年前に渋谷の道玄坂沿いのある風俗店が痴女プレイというのを行いはじめたんですけど、それがプレイとしての痴女の発端ですね。
― 風俗からなんですね。
大 女性による言葉責めや辱め、ただSMまではいかない、というのはそうですね。まぁ、それからビデオが後追いしていった感じです。僕も何回かその店の取材にも行きました。当時、その店にいた子たちは大体がSMクラブから来た女王様でしたね。
K それは意外だなぁ。僕の中ではまず痴漢の女版として痴女が登場して、その後、プレイとして細分化される中で一部がSM化していったという認識だったんですけど。
― 痴女プレイの発端にSMがあった、少なくともその店に関してはってことですよね。
大 そうですね。僕の記憶だとですけど。それまでも痴女という単語はありましたけど、エロ本に登場することもなかったですし、ビデオにもなかった。単に電車の中で猥褻行為をする女ってイメージだったんです。あの風俗店の登場によって、プレイの中で積極的に男を挑発する痴女像っていうのができた。
― そう考えると未だに痴女ってその定義が曖昧ですよね。男を辱めるという点に関してはそれこそSMの女王様がすでにいるわけですし、色狂いということであれば淫乱なんて言葉が先行してありますよね。どういうふうに区分されてます?
K 痴女をメインで撮っている監督がこう言ってしまうのもどうかと思うんですが…、痴女の定義は僕も分かんない(笑)。だから今も探してる感じですよね。例えばこうやって対談なんかで「痴女とはこういうもんだ」って話していても、違う対談では変わってたりする。ざっくり言えば積極的な女ということになるんです。セックスに貪欲で、受け身ではなく能動的にリードするような女ということになるんでしょうけど…、難しいですよね。
大 僕もその通りだと思うんですけど…、まぁビデオということで言えば挿入のあるなしじゃないですかね。挿入がなければSMよりになっていき、挿入があると痴女になっていく。
K なるほど、それはありますね。
大 ビデオ的にはですけど(笑)
― 百人百様ではないですが、ビデオ見ても痴女の捉え方は全然違う感じですよね。
K もう今は女子高生みたいな若い子でも痴女って言葉は知ってたりしますからね。
― どうなんでしょう。僕なんかエロ本やってると言語感覚が麻痺してくるところがあって分からないですね(笑)
大 それに関して言わしてもらうと、僕が痴女を始めた13年位前なんかだと、女の子たちは痴女を全くできなかったんですよね。ここはこういう風に言うんだよとか逐一説明して、よいものが撮れたらそのビデオを見せたりしてたんです。それなのに僕が3年位前に福岡に帰ったとき地元のヘルスに行ったら痴女プレイっていうのがあって、やってみたらみんな上手いんですよね(笑)
K いや上手くなりましたよね(笑)
大 時間の流れを感じますよ。当時は誰もできてなかったのに、いまや福岡の地方都市の風俗嬢でさえ痴女が上手いんですから(笑)
K あれはなんでしょう。ビデオが取り上げるようになって、それを見た男がやらせたんですかね。
大 それこそビデオを見せたりね。
K まぁ痴女に限らずですけど…、AVの世界では女優さんもかなり綺麗になりましたが、プレイも上手くなりましたよね。フェラ一つとってもそうですけど、こちらが要求したらその通りにできる、そういう人が多くなった気がしますね。
大 地方のヘルスでさえできちゃう人がいっぱいいるというのには感動しましたね。日本もこんな国になったかみたいなね(笑)
K 大熊さんは痴女シリーズで十何年やってるわけだから凄いですよね。
大 そうですねぇ、企画が潰れませんでしたからね。売れなかったらシリーズは続かないですから。
K 流行り廃りはあれど、一定層いるんでしょうね、痴女好きが。
― いますよね、下手したら普通の子好きよりも痴女好きのパイの方が大きいんじゃないかって気はしますよね。
大 そんぐらいいますよね。
K なんだかんだ言ってみんな痴女は嫌いじゃないでしょうからね。「俺はSだ」って言ってるような人間でも、たまには女の方から迫られて「おいやめろよ」みたいに言いたいところあるでしょうから(笑)
― M男と痴女好きはイコールではないんでしょうね。痴女は男を否定しないですから…、否定しているように見せかけてゆるりと肯定してくれるというか(笑)
大 そうですよね。全否定されちゃうと勃起にも関わってきてしまいますから(笑)。あと、現代のいわゆる「ひきこもり」的な男子は痴女られたい願望を結構強く持っていたりしているんじゃないですか?
― それはあると思いますね。
大 ネットオタクや草食系男子的な人達もそうでしょう、だから需要はあるんでしょうね。
― 『私は痴女』に登場する痴女たちを見ていても、割合に高圧的に責めてはきますが、男が本当に嫌なことはしてこないし、言ってこないじゃないですか。いわゆるオタクや引きこもりと言われている人達、女の子に自分の欲望を告白できないタイプの人達からしたら、むしろ痴女は男の欲望を強制という形で実現してくれるわけですから、男としては責任も取らなくていいですし、傷付くリスクもない、すごい都合の良い存在だと思いますね。
大 そうですね。ビデオにおいても女性が嫌われてしまったらやはり駄目だなと思うんですよ。だから最終的に、傷付けない程度に男を辱めていくというところに落ち着くんですよね。
― 痴女…、でも本当の痴女というのは存在するんですかね、痴女性は誰しもがもってるとしても、もっとピュアな痴女というか、純粋痴女のような女ってのは…。
K 本物の痴女ですか…、いたずらで電車の中でチ○ポ触って喜んでいるような女はいるでしょうけど。
― それも美女で…、なんてこともあるんですかね?
大 それは夢ですよねぇ(笑)。
K でもこの広い東京ですから、いるんじゃないですか(笑)
大 僕の最後の希望がそこですよね…、どっかで本当に痴女られるというかね。13年撮ってきて本当の痴女と出会ったことはないですから、本当の痴女にやられてみたいですよね、それも綺麗な人に(笑)
― ジャニーズ系の顔だったりすれば、あるいは遭遇するのかもしれないですが(笑)
K そうですよね…
大 そうですよね…
― いや二人とも男性ホルモンの濃さで勝負されてる感じなんで…、他意はないです(笑)
大 いやいや(笑)。まぁ確かに僕らは痴女られにくい感じではありますよね。
― (笑)。では最後にお二人にお伺いしたいんですが、例えば予算などの一切の制約がない中で痴女系のビデオを作れるとなったらどういうものを撮ります?
大 そりゃやっぱりハリウッド女優が出てくるんじゃないですか? ヒルトン姉妹みたいな、ああいうのがでてきて、四畳半に住んでる男の部屋とかに押し掛けていくのがいいんじゃないですか(笑)
― 部屋に入ったとたん「せまっ」みたいな(笑)
K 僕は数に訴えたいですね。美女がいっぱい出てきて、一人の男を何回も…、許して下さいって泣くぐらいまでヤリまくるみたいなね。
― ザーメン搾取ですね。
大 それいいですねぇ、それ撮るなら男優は確実に自分ですよね(笑)。男の願望としては死ぬまでに大勢の美女に襲われてみたいですよね。
― 男の悲願ですね。
K 村なのか集落なのか、そういう秘境みたいな所に迷い込んで、アマゾネスじゃないですけどそこの女性達に行く先々でヤラれるみたいなのいいですよね。
― コンビニ行ってはヤラれるみたいな(笑)。それ見たいですね、痴女村。
大 なぜか村民はみな美人というね(笑)
K 24時間痴女生活(笑)。一緒にやりたいですね。
大 そうですね、男優は僕がやりたいですけど(笑)
― そこは譲らないという(笑)。今日は本当にありがとうございました。
「私は痴女」 監督:大熊金太郎
「宅配痴女」 監督:K★WEST
PROFILE
大熊金太郎
福岡県出身。クリスタル映像に在籍するAV監督。痴女ものAV草創期より痴女を撮り始め、代表的なシリーズ『私は痴女』を筆頭に、多くの人気シリーズを手掛ける。他に『昼下がりの淫ら妻』、『エッチなお姉さんに誘われて』などがある。
K★WEST
岡山県出身。フリーのAV監督。ドグマの『宅配痴女』シリーズ他、ワープエンターテイメント・コブラなど多数のレーベルにおいて作品を撮っている。近作に『貴方のアナニーたすけてアゲル』(コブラ/2010/9/5発売)などがある。