keroppy_maeda#未来1 of VOBO

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ケロッピー前田 ARCHIVE

未来変態放談 #01

BEYOND THE FUTURE BIZARRE
BY KEROPPY MAEDA & GABA GABAKO




来の変態の大本命は
身体改造マニアだ!!


?21世紀の変態のあるべき姿についてちょっと考えてみました



ケロ「僕は、『ニャン2倶楽部』や『ニャン2倶楽部Z』で、ずっと仕事をしてきて、やっぱり、『ニャン2倶楽部』関連の雑誌は、エロ本の中でも変態の一番美味しいところを扱ってきたと思うんだ。だから、21世紀の変態はどういうものか、この場をかりて考えてみようかなと」




ガバ(『ニャン2倶楽部Z』担当[注1])「でも、何にも知らない私が、変態についての語るって相当不安なんですけど」


[注1]ガバ・ガバ子:『ニャン2倶楽部Z』編集部にてケロッピーを担当。『別冊ブブカ』に移籍後も05年まで担当を続けた。




ケロ「いや、そんなに難しいことはないよ。じゃあ、僕からの質問だけど、例えば、昔だったら、うんこを食べたら変態だとか、マゾ奴隷だったら変態だとかっていうのがあったけど、今の感覚としては、ガバ子ちゃんはどう思う?」




ガバ「そうですねえ。今の現状では、うんこを食べるとか、マゾ奴隷とかっていうのはそんなに特別なことではないような気がしますね。でも、身体を改造するっていうのは、今でもびっくりしますよ」




ケロ「身体改造マニアは、理解できない部分があるのかな? カナダで毎年行われている『世界身体改造大会モドゥコン』で、参加者たちに話を聞くと、結構、性的な理由から身体改造の世界に入る人が多い。それは、昔、性器にピアスするのが変態行為だったように、身体改造も、同じ流れでつながっているということなんだよね」




ガバ「なるほど。今では性器にピアスをしている人は投稿者にも結構いますし、特別な感じはしません。舌を切り裂いたり、頭蓋骨に穴をあけたりすることもそれと同じようになっていくと?」




ケロ「まあ、変態っていうものは『そこら辺の人に簡単に理解されてはいかん』というところもあって、『世界で俺一人』っていう領域に入っていかないと尊敬に値する変態にはなれないという(笑)。やっぱり、世界で自分が一番になりたいとか、エロのギネスブックに名を連ねたいというような決意がないとね。ガバ子ちゃんは何かの変態だったりしないの?」




ガバ「私は変態ではないですねえ。ただ普通の人より許容度は広いと思いますよ。ケロッピーさんはかなり改造をやっておられますが」




ケロ「僕自身の興味の範囲でいうと、身体を改造することは、精神的な効果とか、感覚的な変化だな。性器ピアスは、セックスに関して、はっきりとした違いがあるし、それを奴隷の証しと捉えるか、気持ちいいと捉えるかは、人それぞれ。とにかく感覚が変わる。だから、面白い」




ガバ「なるほど。『感覚が変わる』っていうのは、すごくわかりやすいですね。そう聞くと、自分でもやってみたくなるな。でも、ケロッピーさんの話でいうと、身体改造マニアは、さらにサイボーグにつながっていくんですよね?」




ケロ「そうそう。サイボーグの話がエロの話と結びつくのはダナ・ハラウェイ女史が、1985年頃に発表した『サイボーグ宣言』という論文で、人間の性別を、男、女、サイボーグの三つにしたら、いろんな問題が解決するんじゃないかと言ったことからなんだよね」




ガバ「それって具体的には、どういうことなんですか?」 




ケロ「例えば、男と女という性差の問題があって、それをどう解決するかというときに、男女を平等にすると言っても厳密にはありえないじゃないですか」




ガバ「はい、ありえませんね」




ケロ「だから、一番いい方法は男でも女でもない第三の性別を作って、性別を三つにすればいい、そういう話なんだよ」




ガバ「なるほどというか、ちょっと唐突な話で戸惑いますが(笑)」



ケロ「だから、男と女の二つにわけるから問題が生まれるんで、シーメールとか、ゲイのような、男でも女でもない人たちがいろいろいても、構わないわけじゅない。でも、シーメールとか、ゲイとかって、言葉として、ちょっと片寄りすぎる。だから、サイボーグという言葉は、一つの戦略なんだよ。つまり、サイボーグという性別を加えればいいんじゃないかってこと」




ガバ「それなら全員が、サイボーグになればもっと話がわかりやすいじゃないですか?」




ケロ「千年後に全員がサイボーグになっちゃっても構わないんだけど。ただ、いきなり全員がサイボーグって訳にはいかないでしょう。だから、サイボーグというのは逃げ道で、男も嫌だけど女も嫌だとか、人間も嫌という人も、サイボーグになればいい。そうすることで、性差問題を全人類的な問題にするための一つの提案として、サイボーグという言葉を使っているんだよ」




ガバ「うん、確かにそうですね。そういうなんでも受け入れてくれる枠があれば便利ですね」




ケロ「でも、ダナ・ハラウェイ女史がそれを言った時点では、それは理屈であって、あんまり具体的な話ではなかった。でも、例えば、女が男になりたいって性転換をする時、機械仕掛けのペニスをつければそれは一つのサイボーグかもしれないよね」




ガバ「サイボーグというと、全身鋼鉄でキーコキーコなんていうような」




ケロ「そういうイメージをひっくり返したいんだよね。だから、サイボーグと、身体改造マニアがつながっていくと、凄く具体的で、わかりやすくなるでしょう」




ガバ「ふんふん」




ケロ「つまり、サイボーグは、キャッチフレーズみたいなもので、僕なりの説明でいえば、頭蓋骨に穴をあけたり、舌を切り裂いたりしている身体改造マニアは、もっと高度な技術があれば、機械と融合する勇気がある人たちだって評価しているわけですよ」




ガバ「そうでしょうね。でも、そうなるともう人間の姿をとどめないところまでいっちゃったりするんですかね?」




ケロ「でも『気持ち良さ』というのが重要で、嫌なことを我慢してやっているわけではないわけだから。このことは、セックスともつながってくることだけど、快感を感じているから、失敗したら死ぬかも知れない身体改造に挑戦しようという気持ちになるわけじゃない」




ガバ「『気持ち良さ』というのが、根底にあるわけですね」




ケロ「そうそう。だからサイボーグの話を予備知識がない人に話すと、腕を機械にすればいいとかって話になりがちなんだけど、機械を埋め込んだり、身体改造を行うことがどこかで快楽につながってくるからこそ、それをやってみようと決意する人たちが出てくるんだよ」




ガバ「じゃあ、サイボーグになりたい人って言うのは、もっともっと気持ち良くなりたい人ってことなんですね」




ケロ「だから、エロティックな変態と同じ地平線にいると思うんだよね」




ガバ「身体改造の衝撃的な写真を見るだけだと、なんでそういう行為をするのか理解できなかったけど、気持ち良くなりたいからなんですね。実際、どんどん気持ち良くなっていくから次へ次へと進んでいく。とてもわかりやすい話ですね。『気持ち良さ』を求めた行為だと、どこまでも行きますね」




ケロ「そう、だから、この人たちを止めることはもうできません(笑)」




ガバ 「ええ、止めません(笑)」





※『ニャン2倶楽部マニアックス VOL.2』(2001)掲載


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