ヒロイン手帖 その3
山本弘
だってエッチしたら処女じゃなくなっちゃうでしょう!
文/荒玉みちお 構成/うぶモード特ロリ班
自分はロリコンであると、カミングアウトする人は多くない。
イメージが悪いからだということは推測できる。ヘタすりゃ犯罪者扱いだろう。それを承知で、いや、そんな偏見を解くために、あえて自分の公式サイトの特設ページで大々的に『あなたの知らない児童ポルノの真実─あなたも間違ったことを信じていませんか?』と社会に問いかけている作家がいる。
山本弘─。SF作家としてメジャーな存在であることは言うまでもないが、いわゆるトンデモ本の間違い
を科学的に検証し、結果、面白おかしい評論集団として認知されている「と学会」の会長としても知られた存在である。
山本氏の主張は「単純所持まで取り締まる必要がどこにあるのか。ロリコン犯罪者を取り締まるのは現行法でもできる。ロリコンをひとまとめにするな。狼系ロリコン犯罪者と羊系美少女愛好家は違う」と、そのような内容を「と学会」会長らしく詳細な資料など添付して説いている。
「ファンタジーなんですよ。実際にどうのこうの、という対象ではなくて、愛でる対象なんです。手を出したいとは思わない」
だから実践主義は苦手。
「フィクションの中でも超えてはいけない一線というのがあると思っているんです。そういうの(実践)が好きな人がいるのもわかりますけど、現実になったらいけないと思う。小説の中でも犯罪行為は肯定しないというのがポリシーですし、女の子がいじめられる場面が出てきてもそれは否定的に描かれなければいけないと思っていますんで」
そういう考え方をもっとも端的に表した言葉が公式サイトにも書いてある。
『─だって、エッチしたら処女じゃなくなっちゃうじゃないですか!─』
少女が好きだからこそ大事にしたいと。
「清らかなものというイメージだから汚すなんてもってのほかです」
ロリコンといっても人によってストライクゾーンは大きく違っているが、山本氏の場合は「11歳から15歳くらいをイメージしています」とのことだった。
「自分でもいつの間にそういう感覚(ロリコン趣味)を持つようになったのか、よくわからないんですけどね」
下地が出来たのは不明でも、気付いた時期は明確だ。
「ソフィですね。それを初めて見たときに衝撃を受けました。僕が25歳のときで、当時アルバイトをしていた大学の生協に平積みになっていたんです」
今から約27年前の1981年に出版されたカメラ毎日別冊『石川洋司写真集 妖精ソフィ』(毎日新聞社刊)。13歳のベルギー少女がすべてをさらけ出している写真集だ。
「そもそもね、エロの世界って好きじゃなかった。今でもそうです。実際のこういう写真(本誌……涙)とか。でも『ソフィ』を見たときは衝撃でしたね。僕は中学生の頃から小説を書いていたんですけど、その頃から主人公の女の子は16歳くらいだった。でもそれは同世代ということですよね。それが、20歳になっても25歳になっても変わらない。それでソフィに出会って〝少女は美しい〟と。だから自覚したのは、この写真集がきっかけだったと言えるかもしれません」
もともとが研究家、かつ収集家。目覚めたら追求する。
「そこから、ソフィ以前に出版されていた沢渡朔さんの『少女アリス』(河出書房新社/1973年刊)とかまで遡って買うようになった。『妖精ソフィ』の翌年、同じ石川洋司さんが撮った『まだ、少女。』(タツミムック/1982年刊)もよかった」
70年代から80年代半ばは少女写真集の全盛期。毎日新聞社さえもロリコン写真集を出しているのだから、よき時代だった。
「僕はエッチ本には興味はなかったんですけど、エロじゃない時代の少女写真集に興味を持っていたんです。だから買えたというのがありますね。女の子が股を広げたりしている写真が載っていたら買ってませんね」
しかも山本氏のロリータ趣味には、もうひとつのポイントがある。それは「西洋少女」にしか興味がわかないという点。
「なんで日本人がダメなのか、それは自分の日常に近いからだと思います。西洋だとファンタジー色が強い。こっちの勝手なイメージですけど。日本人はどうしても泥臭いんですよ。偏見なんだろうけど(笑)。アジアも同じ。特にどこの国がいいってわけじゃないんですけどね。一時期、ロシアの少女写真集を持ってましたけど、でも民主化して間もない頃のロシアってなんか貧乏な印象があったでしょう。そういう経済的な理由で親が子供を脱がせたのかもしれないとか考えると、萎えるんですよ。東南アジア系もそう。人身売買みたいなものがあるんじゃないかと考え出すと、ちょっと耐えられないですね」
西洋がいいと言っても背景も必要なのだ。
「妖精ソフィには、プロフィールが全部出ていたんですよ。ベルギーに住んでいて……とか。やましい背景が何もないからよかったんです。お金の絡んだリアルな想像が頭に浮かぶと、ファンタジーから遠ざかって魅力がなくなってしまうんですよね」