「サエボーグのラバー牧場」 フェチか? アートか? 5月4日開催の「大ゴム祭」ディレクターが語るラバーの新地平!

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サエボーグのラバー牧場

フェチか? アートか?
5月4日に迫った「大ゴム祭」ディレクターが語るラバーの新地平

文・写真/ケロッピー前田


フェティッシュ系変態マニアの王道といえば、ラバー。ぴったりと密着するボディスーツで全身を覆い、ともすると呼吸すら難しい窒息寸前で、他の方法では味わうことのできない恍惚の世界に入るのだ。さらに、そのツルツルとした独特の質感、キラキラと煌めく人工美ゆえに、SF映画に登場する未来ファッショの定番となってきた。

そんなラバーが近年、日本で独自の進化を遂げている。赤、青、黄色、緑などのカラーバリエーション、インフラタブルと呼ばれる空気を入れて膨らませるバルーン構造で、人間たちが原形を留めないほどに変容したフォルムを手に入れることが可能になったのだ。

さて、今回、ご紹介したいのは、日本のラバーシーンの牽引役であり、ラバー素材を用いた美術家としてメキメキと頭角を現してきているサエボーグ嬢である。彼女は、来たる5月4日、月例パーティ「デパートメントH」で開催される「大ゴム祭」のディレクターも務め、自ら本気のラバリストたちのスピリッツを理解しながら、さらに独創的なラバー牧場のシリーズを作り出して、国際的にも注目される存在となっているのだ。

彼女の作品はフェチなのか、アートなのか。その両方を兼ね備えているからこそ、より多くの人たちを魅了してやまないのだろう。今年の「大ゴム祭」では、サエボーグ嬢のラバー家畜が勢揃いするほか、新作のラバー豚、サエポークのお披露目もあるという。制作に追われるサエボーグ嬢に聞いた。



★ラバー素材の作品を作り始めたきっかけは?

「最初はラバーを作品としてやっていこうという発想はなかったんですよ。美大の学生時代、ラバーは趣味、個人的なセクシャリティにかかわるものだと思っていたので、自分が制作するアート作品とは別物だったから。でも、08年、美術評論家の杉田敦さんがキュレーションした『ジェンダー・ゲーム』というグループ展に、ラバーのプードルを出品させてもらって、文脈付けをしてくれた。ラバーで表現をしていいんだ、自分の欲望を作品にしていいんだと思えるようになって、自分がやりたいことがよくわかったんです」

★サエボーグさんのラバー作品は、皆、空気を入れて膨らませるインフラタブル構造になっているのが特徴です。

「人間じゃないものになりたいという願望から、全身をすっぽりと覆うラバースーツが良かった。さらにインフラタブルにすることで、人間的、女性的な身体のラインもわからないものにしたかった」

★作品は、すべて自分が着るサイズで作っていますね。

「複数のラバー家畜を披露するときは、他人に入ってもらうことも多いけど、自分用に作っているから、どれも自分自身の分身であるといえる。自分が着たときの一体感、自分のなりたいものになれたという喜び、他人はそうじゃないかもしれないけど、理解してくれると嬉しい。それが自分の理想の形だから」

★サエボーグさんが作り出したラバー家畜たちを紹介してもらえますか?

「2010年、最初に作ったのは牛のサエビーフ。とにかく、作りたいの一心だった。早く自分がその中に入って、人間じゃないものになりたい、本当にそれが一番の動機だったから。特にビーフはギミックはなく、造形に専念できたので、フォルムがとても可愛い。乳を絞られちゃうんですけどね」


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★ギミックというのは、サエシーブだと毛を刈られるみたいな。

「そうそう。次に作ったのが羊のサエシープ。オッパイが大きくて、中に入っても動きやすいから思い入れも強い。毛に当たるインフラスーツを脱がされると、丸裸になっちゃうの」



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★サエチキンはさらに凄いギミックがありますね。

「肛門の部分に顔があって、人間が後ろ向きで入っているから、入って楽しいかっていわれると正直にわからない。ひたすら、卵を産むというコンセプトを重視している」



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★豊満な農婦も強烈なインパクトですよ。

「本当は、飼育役として自分が着るラバーウェアを作るつもりだったのに、やっぱりインフラじゃなきゃって。サエノーフは、ちゃんとアソコもついているから、裸になると超エロくなって。それでも、顔のデザインはオモチャから発想しているから、表情は人間ぽくはない。ノーフが語り部的な役割を担ってくれて、ラバー牧場のコンセプトがわかりやすくなった」

★2012年のヴァニラ画廊の個展『スローターハウス・シックス』では、ラバー素材のジオラマも登場しました。

「作品として見せるために重要なのはコンセプト。ラバー家畜たちが持つストーリーが、キャラクターに対する思い入れを作っていく。背景もすべて人工的な質感のラバーで作ることで、平和的に見える牧場が実は人為的に厳しく管理された世界であり、ラバー家畜たちは支配され搾取される対象となっていることをわからせたかった」


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★ラバー牧場を説明するとき、イギリスのテレビ番組『テレタビーズ』をよく引き合いに出していますね。

「『テレタビーズ』って、彼らは明るく暮らしているように見えるけど、水槽に飼われた金魚たちのように管理されている。でも、本人たちは、全然、気付いていない。囲われの身の彼らを可哀想だと思う人もいるけど、飼われている方が楽かもしれないという皮肉もある」

★ヴァニラ画廊の展示では、ゴムの有刺鉄線で牧場と観客が区切られて、どっちが家畜がわからない状況が面白かったですよ。

「幸せそうに見えるけど、管理されているんだってわからせるために、ゴムの有刺鉄線で仕切ったんです。それだけじゃ、説明不足かなと思ったけど、お客さんが入ったら、完成されましたね。狭くなったけど、観客の方が家畜のように閉じ込められて、観客と作品の立ち位置が逆転することで、この窮屈な日本の現状も映し出せたかなと」

★これからの予定としては?

「とにかく、家畜を増やして、ラバー牧場を完成させたい」

★来たる5月4日(土)の「デパートメントH」では、新作のサエポークがお披露目になると。

「これは、もの凄く存在感のあるメス豚です。そこに込められた意味も強力で、生きた肉塊として屠殺されちゃうギミックですからね!!」


(聞き手&写真:ケロッピー前田)



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サエボーグ
ラバーのインフラタブル構造でアニマルスーツを制作、着ぐるむことを好んで活動中。夢はラバー牧場を作ること。
http://department-h.com/saeborg/

SLAUGHTERHOUSE-SIX@ヴァニラ画廊 2012




デパートメントH
5月4日(土)
open 24:00
@鶯谷東京キネマ倶楽部http://www.kinema.jp  03-3874-7988
¥5000/ ¥4500フライヤー持参/ ¥3000ドレスコード
飲食持込自由。会場内でアルコール類の販売はしておりません。 男女更衣室有り。

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毎年、5月の「デパートメントH」は、「ゴムの日」にちなんで「大ゴム祭」が開催されている。総勢60人ものラバリストたちがステージ上を大行進、思わずフェチ心が芽生えてしまうスペシャルショーが楽しめる。重度マニアのラバリスト軍団、サエボーグのラバー牧場、さらにはラバーアーティストのKid'o氏率いるチーム・クラゲが日本のラバーの真髄を見せつけるのだ!!





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