ヒロイン手帖 × 高月靖 2

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?多くの人に取材して思いました… “ロリコンは一括りにできない、この言葉はあまりに広すぎる“と



具体的に「ロリコンとペドフィリアは違う」と、ロリコン趣味人たちがよく言うのだが、そのあたりも詳しく解説してある。少し引用してみよう。


『─アメリカ精神医学会(APA)はペドフィリアについて「思春期以前の子供、または13歳以下の子供に対して、性的興奮をともなう空想やセックスをしたいという性的衝動などが6ヶ月以上続く」などの基準を示している。

また世界保健機関(WHO)は「思春期以前または思春期早期の少年、少女、あるいは両方に対する性的嗜好」と説明している。

「13歳以下」「思春期早期」はロリコンたちが最も好む年代と重なる。この定義に従えば、彼らはペドフィリアの一種だ。ただしAPAもWHOも、ロリコンたちがアブノーマルに感じる「思春期以前」を対象に加えている。そうした性的嗜好の持ち主をひとまずペドフィリアとしてロリコンと区別するのは妥当といえるだろう─』


『─欧米ではペドフィリアという言葉が割と一般的に用いられているようだ。その場合は精神障害というより、18歳未満に対する性的嗜好全般を指すらしい。それに対して日本で一般にペドフィリアといえば、病的なイメージ、あるいは危険な犯罪者のイメージを特に強調するために用いられることが多い─(中略)─思春期の異性への関心と幼児への性的嗜好を切り分けるべきだという話は、確かに一般論として頷ける。あるいは思春期の相手を好むことをヘベフィリア、思春期から18歳あたりまでの相手を好むことをロリータ・シンドローム、青年期までの相手を好むことをエフェボフィリアとしてペドフィリアと区別するといった分類もあるようだ─』


『─ペドフィリアは圧倒的に男性が多い。だがWHOの資料で「少年、少女、あるいは両方」とされている通り、性的嗜好の対象として男女の区別がない。彼らが求めるのは、性的にはっきり分化していない第一次性徴期の子供だ。その意味で性別はさほど大きな意味がないということらしい─(中略)─たとえば東南アジアの児童買春といえば幼い少女の被害者を連想するが、少なくとも欧米人のペドフィリアたちは幼い少年にも同じくらい執着するという─』


他にも日本ロリコン男児に希望を与える記述が多々あるが、「しかし」と高月氏は言う。


「ロリコンの方々やそれを理解する一部の人がこういう言葉を使って区別しても、世間一般の人がそういう意識を持たなければ意味がないと思うんです。多くの人が幼女レイプ認知件数の推移や加害者の傾向も検証しないまま、感情論で議論しているでしょう。なのに定義を論じても話がすれ違ったままですよね。ただ実際に子供を性の商品にするコンテンツが多いことも、話をややこしくしていますけど」


そもそも日本の「ロリコン」は「アニメ」や「オタク」とセットで独特の文化を形成してきた歴史がある。



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「海外のことはよくわからないんですけど、向こうには日本みたいなのは、ないですね。昔のアニメには幼女のパンチラとかあって、そういうのをコレクションしている人は海外にもいたりするんです。50~60年代頃のソ連で作られた幼女のアニメがあって、これを丹念に蒐集している人もいる。幼女が主人公の古い新聞漫画を集めているとか。そういう感じでオタク的なコレクターはいますけど、日本みたいにサブカル文化みたいな扱いをする国は、ちょっとないですね」


漫画の系譜をたどれば、日本的なロリコンが何なのか、少し見えてくる。


「終戦を間に挟んで、女学校の文化が少女漫画に受け継がれてきた。少女漫画の目がキラキラなのは、すでに戦前の少女雑誌に書かれていたんです。それがアニメに受け継がれて、少年漫画誌にも広がり、男たちがぶわっと集まってきた。それまでの少年漫画は『巨人の星』や本宮ひろしの世界だったのが、徐々に少女化して、あだち充みたいなラブコメ、ラブスポ漫画を男が好むようになった。80年代後半にはもう哲学者の桜井哲男さんや評論家の大塚英志さんらが〝社会が少女化してきた〟と書いていました」


少女文化が開花した頃の少女たちがお母さんになり、その子供たちがオタク文化を生みだして「ロリコン」と言われて嫌われる世界観を作り出した。


「〝自分も少女になりたい〟というロリコンの人は多いんです。いつまでもきれいなまま成熟せず、ちやほやされていたい、という願望です」


だから大きな括りで「ロリコン」とひとまとめにして、イコール悪とする社会の空気に違和感をおぼえるのだろう。人形のコレクターを取材したときの印象だ。


「部屋だけを見ると、普通のイメージだったら女の子の部屋なんです。壁にたくさんの人形が寄りかかっている。でも実は中年男性の部屋なんですよね。その人はこうおっしゃいました。〝突き詰めて言うと、僕にとってロリとか少女とかは、動いているより止まっているほうがいいんでしょう。生きた現実の少女じゃなく、人形みたいなもので所有したいって感じでしょうか〟と」


そのドールコレクターはこうも言っている。発言を引用しよう。


『─もうひとつ僕の趣味に関わっているのが「アリス」。「アリス」といってもディズニーのアニメは見たことがありません。「アリス」は大人が読むものだと思っているから、子供向けに作られたものは最初から別物という感じですね─(中略)─ナボコフの小説、映画の「ロリータ」も有名だけど、アリスの魅力は全然違うんです。たとえば「赤毛のアン」も少女が出てくる文学だけど、アンはどんどん変化して、やがて大人になって結婚するでしょう。でもアリスは最初から完成されている─(中略)─アリスに対するこういう趣味が、東南アジアの買春なんかに結びつくとは思わないです。そういうの行く人は、放っといても勝手に行くでしょう。性の対象にすることは可能かもしれないけど、僕は最初からそういうものだと思ってませんから─』


この人もまた大きな括りでロリコンの仲間に入る。


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