ぼぼ寄席 第二席
快楽亭ブラック 落語界の異端児
文/藤森洋介 写真/福田信哉
これほどまで型破りな落語家を見たことがない。これほどまで危険な落語を聞いたことがない。
放送禁止なんて当たり前、出入り禁止の寄席は数知れず、その上、借金を元に立川流を除名とは、どこまでいっても芸人である。
そんな破天荒な噺家、快楽亭ブラック師匠がついにVOBOに見参!
さぁさぁ、放送禁止落語の始まり始まり?。
ブラック師匠にアブないネタを始めたきっかけを聞いてみました。すると出るわ出るわ、VOBOでも公開していいのか迷うほどの危険なキーワードが次々と。今回だけ特別に公開します。問題発生したら削除必至ですのでなるべく早くご覧下さいまし。
ブラックと朝鮮人
ー今回はブラック師匠にかなり危ない小咄をやっていただけるということになったんですが、そもそもそういった噺を始めたきっかけはどういったところからなんですか?
快楽亭ブラック(以下:ブラック):そうですねぇ。危ないネタは古典落語に狸【注】ってのがあるんですけど、昔読んだ竹中労の本で、『歌舞伎の「葛の葉」という話がある。ある男性と狐が恋をして結婚し、そこで産まれたのが陰陽師の安倍晴明。論理的に人間と狐が結婚できるはずがない。あれは貴族と部落民の身分制度の厳しい時代の恋が隠れたテーマなんだ』という文章を読んで、「部落民が狐かぁ、じゃあ狸は朝鮮人か」ってすんなり思いついて。それで古典落語の狸をやってみたらどうだろうって考えたのがきっかけですね。
【注】古典落語『狸』:子供に虐められている狸を助けた男が、その狸から恩返しをされるという噺。
ーその発想の転換が面白いですね。
ブラック:狸を全部朝鮮人に置き換えてみたら差別問題の本質が浮かび上がってきて、それが妙に面白くて。高座にかけてみようかなと思ったら、周りがもの凄い引いちゃってるんですよ。当時僕は二つ目だったんですけど、二つ目は寄席でトリをとっちゃいけない決まりがあるんです。でもあまりに僕が凄い落語をやるんで、客とかが怒鳴り込んでくるんじゃないかってみんなビビって「俺たちは終わったら先に打ち上げに行ってるから、お前は無事だったら来い」みたいに言われまして(笑)。でも僕も完全に理論武装はしていて、これは差別をしている訳じゃないって、恐る恐るネタをやったら大爆笑。これまでの落語人生で一番ウケて、その快感が病み付きになって、それまでタブーとされてたものをに挑戦しようと。
ブラックと皇室
ー怒られたりしたことはなかったんですか?
ブラック:皇室ネタでありましたね。
ーそれは右翼が来てとかですか?
ブラック:そうそう。たまたま右翼が来てて。僕は鈴木邦夫さんと友達になって、落語会に招待したら当人が来なくて、そこの若い衆が来てね。本当は怒鳴り込みたいだろうけど、一応自分の親分の友達だからって、怒りで身体がワナワナさせながら手は出せず「二度と皇室を誹謗中傷するな! 次はただじゃおかないからな!」って。
ーすごい体験してますね。無事だったんですか?
ブラック:その時は「我々はお客さんを笑わせるのが家業なのに、こんなに怒らせて…、このまま帰らせるわけにはいかないからどうぞ打ち上げに付き合って下さい。もう二度とやりませんから」って言って、近所の居酒屋に行った後、カラオケスナックに連れてって。そこで右翼のお兄ちゃんを女装させて写真撮ってね(笑)。そのままその写真をテレカにしちゃったんです(笑)。それで次また皇室ネタをやった時にも来ていて「貴様! もう二度とやらないって言っておきながらまたやったな!」って。「うっかりやっちゃったんですけど、あなた方も大変だよね。日教組粉砕って街宣車に乗って強面で凄んでみてもさ、こんな変態だったら日教組も怖がらないよね」って作ったテレカを目の前でチラつかせて(笑)。もちろんよこせって言われましたけど、いっぱい作ってあったんで、どうぞどうぞって(笑)。「さぁどうする? 皇室ネタ認める? それともこれバラ撒く?」って。
ー恐喝じゃないですか(笑)。
ブラック:そのやりとり鈴木邦夫さんが見てて大爆笑。「右翼に脅された奴はずいぶん見たけど、右翼を脅したのはあんたが初めてだ」って(笑)。
ブラックと学会
ー(笑)。そういうエピソードは他にもあるんですか?
ブラック:知らないで学会の集会で学会のネタやった事もあります。
ーきましたね~(笑)。
ブラック:何でウケないんだろうって(笑)。岩谷テンホーみたいな下ネタ4コマを描く笑太郎って方がいるんだけど、その方に新宿永谷ホールでライブをやるんで、ゲストで落語をやってくれって頼まれまして。僕の前座がマグナム北斗と、浅井理恵だったんですけど、何したかっていうとシルエット越しで生でフェラチオをするっていう。その後だから際どい下ネタをやらなきゃダメだって思って、山本リンダを浣腸して、漏れる寸前にお尻の下に池田大作の写真をおいて、もう限界だけど池田大作を汚しちゃいけないって苦悶している山本リンダを見ながらオナニーするっていうネタをやったんですよ。
ー(笑)。面白いですけど危険ですね。
ブラック:どこでも大爆笑のネタですよ。でも僕の落語人生で唯一その場だけはウケなかったんですよ。
ーおっかしいな~ってなりますよね。
ブラック:後で聞いたら、その漫画家の笑太郎ってのが学会の青年部の部長で、集まってる客は全部学会員だったんですよ(笑)。知ってたら喧嘩を売るようなことはしなんだから(笑)。知ってれば池田大作万歳ってネタもあったのに。
ー(笑)。まだ今日やるネタを聞いていませんでしたけど、今日はどういうネタをやる予定ですか?
ブラック:全然考えてなかった。今回の話がきたから、じゃあ今日はそういうネタをやろうと、今決まったようなもの(笑)。
ーありがとうございます(笑)。ちなみに地震のネタとかはあります?
ブラック:あります、あります。もちろんです(笑)。
ー即答でしたね(笑)。
ブラック:今年は鬼畜東電をテーマにね。
ーそれは楽しみです。本日はありがとうございました。
ブラック:はい、ありがとうございます。
快楽亭ブラック(かいらくてい ぶらっく)
1952年生まれ。69年、立川談志に入門し落語家の道へ進み、92年に二代目快楽亭ブラックを襲名し真打に昇進。数々の新作落語を創作するも、あまりに過激な内容の為、出入り禁止になった寄席もある。