nawashi3 of VOBO

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文=荒玉みちお
写真=石島祐士



ショッキングな首吊り映像を世に送り出し

業界に賛否両論を巻き起こした男=風見蘭喜。

今回、その一連の事件の発端である一本のVHSを軸に

男の素顔をエグるインタビューを血行。

果たして風見蘭喜はSM界を破壊する悪魔か

それともSMの未来を切り開く救世主か?

常に我々が動向に注目している危険人物がついに登場。



 2004年頃、とんでもないビデオが出たと問題になった。首吊りプレイ。首に縄をかけられた女。天井からさがった縄を背後から引く男。縄の遊びがなくなり、完全に張りつめた状態となり、そして徐々に上昇をはじめる女。足が伸び、爪先立ちとなり、その爪先さえも床から離れ、完全宙づりになった状態で数秒間。手がぴくぴくと痙攣しているように見えたところで、降ろされた。

背後に「怪奇! 残忍! 首吊りショー」などという垂れ幕でも下がっていればこれはマジックかと安心して拍手を送る場面だが、実際には種も仕掛けもないリアルなプレイ。女がややぐったり加減ながらも動いてるのを見て、ホッとする。弛緩している女を抱きかかえているのは、プレイの仕掛人である風見蘭喜氏。

関西弁の、ホンモノのアッチ系のお人かと見紛うコワモテのおっさんである。業界はすぐに反応した。賛否両論というか、我々取材陣が聞き取り調査をした限りでは、SM界のほとんどが「否」として話題にしていた。


「今回はあの首吊りの風見さんです。最近、東京に進出したみたいなんです」
 担当編集M氏が言った。身が引き締まった。常識はずれの武闘派が東京に乗り込んで来るから様子を伺ってこいと言われている、気弱な鉄砲玉の気分である。
「マジですか…」
「ええ、マジです」
 待ち合せ場所は高田馬場駅前。M氏と2人でお出迎え。会ったことがあるというM氏は「怖そうな人だからすぐわかると思います」と追い打ちをかけてくる。


「あっ、どうも!」


 近付いてくるM氏を見つけた風見氏は元気よく笑った。拍子抜け。ビデオで見る姿とはずいぶんと違うような気がする。関西コワモテ系というより、関西商人系。それでも水戸黄門悪徳商人系の笑顔ならまだ頷けるが、どう見ても天真爛漫無邪気系の笑顔である。

「今日は風見さんの全てを語って頂けると有り難いです」
 編集M氏が言うと「いや~、恥ずかしい過去がいっぱいありますからね~」と笑った。そして「昔はヤンチャでしたからね」と付け加えた。頂戴した名刺には「緊縛師」と肩書きがあった。はじめて女を縛ったのは26歳のとき、相手はテレクラで引っ掛けた女。


「遅いでしょ~。それも汗だくになって縛ったんです。テレクラで引っかけて、SMやってみたかったんでちょっとロープを買いに行こうと、アダルトグッズ屋に行ったんです。おっちゃんSMロープちょうだいと。で、いま考えると出てきたのは洗濯ロープなんです。よう雑貨屋なんかで売ってる黄色いビニールのあるでしょう。あれだったんですよ。それ使って試行錯誤しながら亀甲縛りしたんですけど、うまいこといかんのです」


 伝説の“首吊り処刑人”の過去とは思えない逸話。そもそも「昔はヤンチャ…」という発言も、聞いた瞬間は「関西の武闘派として、同類のヤンチャ人種を何人も葬り去って、大阪で○○といえば知らない者はいない」といった系統のヤンチャ族かと思い、やはい「過去のある人」なんだなと納得したのだが、実はよく聞いてみると「15歳から女を切らしたことがない」と豪語する、そっち系(エロ系)のヤンチャ族だったと言うのである。


「だから何人とやったか分からない。テレクラがもともと好きで、1回だけやって終ったという女もたくさんいるし。女医さん、看護師さん、学校の先生、色々いました。でもね、結局やるだけだと飽きちゃうんですよ。そやから途中から会ってもやらずにメシ食って。エッチもやらずにはい終り、サヨナラと。やる気満々で来ている人には“バカにしてんの!”と怒られてましたね」


 それで普通のセックスに飽きて、SMに興味をもったという流れ。興味をもったら即実行、普通のテレクラに飽きてSM専門のテレクラでM女にコンタクトを取る。そして先程の「26歳初縛り」へと続く。


「5人ぐらい連続で会ったのかな。だけどね、それが続かないんです。1回こっきりでおしまい。はっきり言って、女の人の方がレベルが高いんですよ。女の人にしたら“縛れる”と言って出てきた男が、実はよう縛られへんとわかって“なんやこいつ、できへんやんか”という感じなんです。

そっから、マズい、方向性を変えようと、羞恥プレイに行ったんです。ちょっとSMに興味を持ったばかりの、初心者に近い女の子はエッチの延長線上みたいな感じで、むしろそっちのほうが喜んでましたね。会ったばかりの女の人を全裸にして缶ジュースを買いに行かせたり、深夜の公園を全裸で歩かせて、それを車のヘッドライトで照らしたりと、いろいろやりましたよ」


 風見氏の名誉のために付け加えておくと、「両親の寝室でSM雑誌を発見して目覚めた」とか「学校帰りの路地裏で女の子が隠れて用を足してる現場に遭遇して、その恥じらう表現にグッときた」など一般的なSM系エピソードも多々あるのだが、こっち系のほうが面白いので、ここでは集中的に紹介させて頂いてい。
 初めての緊縛は26歳のときだが、実は過去にもチャレンジしたことはある。


「最初のSM経験は20歳の時なんです。大学生やった。興味はありましたから、心斎橋のSM倶楽部に行ったんです。で、まぁやり方が分からんから教えてくれや、みたいな感じで。そしたら“やられてみないとわからんやろ”と(女王様に)言われ、まあそうやなと。真に受けた僕がバカやったんですけど、いきなりチェーンロープを使って逆さ吊りまでやられまして。

ほんで目隠しされて煙草の火で炙られて。最後は面白がって3対1になりましたからね。それで帰り際に言われたのが“あんた、チ○ポも立ちへんのかいな。帰ってオナニーしときいや”ですから。そんときは、もう2度とSMなんかするまいと思いましたよ~。なんやこの人種はと」


 無邪気の笑顔で語るが、意外と根にもってるらしい。エピソードの続き。その後、テレクラに熱中した風見氏は、アダルトグッズの卸業という事業を展開。そのときに、3人のうちの1人に会った。


「アダルトグッズを卸してるとき、SM倶楽部に行ったんですよ。そんとき(女王様から)私とプレイしようと言われて断ったら“私とでは不服なんかい”と怒り出しまして。いやそうじゃない、実はこういう恥ずかしい過去があるからSMはもう勘弁なんですと言ったら“初めての子にそこまでするのは可哀想や。

でもそれ、うちのママとちゃうか”となって。そこへちょうどママが帰ってきたら、そうだった。ママに“うち、ちゃうよな”と脅されて、違います~言うたけど、心の中では“あんたや~”と叫んでましたよ(笑)」


 いわゆる出張ホストもやった。


「相手は、ほとんどが40代以上のカップルでした。出張マッサージというやつで、よう詐欺にひっかかるヤツが多くて話題になりましたでしょう。あれです」


 そんなエロ極め道の成果が「手マン屋」「手メコ屋」の称号である。潮吹きテクニックが抜群で、そんな呼び名がついた。


「ちょっと試してみましょうか」


 風見氏はそう言うと、編集M氏の手の甲に中指を垂直に置いた。そして小刻みに振動を与える。天然ローターである。


「あっ、アッ、なんか変。そうですか、これが女の人のオメコの中で…」


「これ、女の子にやると“なにゃねん、これ気持ち悪いわ~”って言われますよ」


 風見氏は無邪気な笑顔を見せた。関西で極悪サディストとして昔から有名だった人に違いないと睨んでいた人物が、実は「手メコ屋」として名を馳せていた…。
 しかし、この普段のノリに騙されてはいけない。風見氏はその後、大阪で念願のSMサークルを立ち上げて10年後“首吊りプレイ”という衝撃的なビデオを世に出して話題をさらった極悪処刑人なのである。


「反響は凄かったでしょう」


 問題の作品を手にしてそう問いかけると風見氏は胸を張りながらも、苦笑した。


「凄かったですねぇ~。賛否両論、否ばかりですけどね」


「そもそもはどういう経緯で首吊りを?」


「ビデオを出そうという話になった時、首吊りでどうかと打診したら、女の子もOKしたんでね。今まで半吊りってのはあったみたいなんです。爪先立ち。半分も全部も一緒やろと。最初にやったのは九条OSです。客の反応は…、みんな帰りました(笑)。やっぱり、ああいうところはエロ客だから、首吊りとか血みどろ系とか好まれないのですよ。もう、ぶわーっと帰りよりました」


 それからビデオを含めて6人を処刑している。


「一応ね、人間の骨格、神経…勉強はしてるんです。僕は柔道やっとったんで、ある程度は分かるんです。まぁマネする人はいないと思うんですけど、ちょっとでもズレたらアウトですね」


 真似しろと言われてもゴメンである。


「数秒間の勝負なんですけど、うーん、やると3日くらい疲れますね。限界というのは女の子によって骨格も違うから一概には言えないんです。見極めだけですね、こっちの。理屈では、だいたい15秒まではOKのはずなんです。それ以上やっとったらヤバいですね。ビデオは7秒。カメラマンのカットが入りました。手が痙攣してるの見て、もうダメって焦ったみたいで」


 ここでも無邪気な笑顔が崩れない。


「首吊りは、なかなか死なないですよ。絞首刑って踏み台を外すでしょう。あれは骨を折るんです。僕ね、首吊り現場に遭遇してるんです。持ち上げて、2~3人で降ろして蘇生した。人間て死なへんな~と、そういうのを見てきているから、意外と人間って強いと思いますよ」


「自信がある?」


「いや、やっぱり怖いですよ。いつ犯罪者いなるかなと。まあでも本人のOKが出てますし。はっきり言って半殺しですから、“体を預けます”と女の子に言われた時点で、その重さは感じますけどね」


「それは信頼関係ができてるから?」


「ああ、信頼という言葉、あまり好きじゃないんですけど、その言葉を使うとすればやる前に出来てると思いますよ」


 サラリと言った。今後の夢を聞く。プレイは「いや~、できないですよ」と前置きしながら「コンクリート詰め」と笑った。拍子抜けするほどに気さくな人だったが、脳みその中は、やはり極悪処刑人。一方で「でも本当の夢は『徹子の部屋』に出演することなんですけどね」と、オチを忘れない関西系遺伝子も発揮するのであった。


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PROFILE
風見蘭喜(かざみ・らんき)
「極悪非道」という言葉がピッタリの浪速系緊縛師。2006年に「サークルM,s」発足を機に、本格的な活動を始める。自身のレーベル「乱鬼龍」で過激な映像を世に送り続けている。