《ボンクラ童貞編集者からの人生相談》 小田原ドラゴン 「若くて楽しそうな連中、特に女にモテる奴は嫌いなんです。」

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ボンクラ童貞編集者からの人生相談

小田原ドラゴン

若くて楽しそうな連中、特に女にモテる奴は嫌いなんです。

取材/童貞編集者チェリー平尾



女性とキスはおろか、話すだけでも緊張してガチガチになってしまう童貞編集者。その女性に対する免疫の低さは、プライベートどころか業務にまで支障をきたす有り様であった。今までさしたる困難もなく、のうのうと生きてきたボンクラ青年に降りかかってきた人生最大の試練。壁にぶちあたり途方に暮れた彼は、悩みを解決する光明を得るべく、待へ繰り出していったのだ。果たして彼は救われるのだろうか? 明日はどっちだ?



ーボクは童貞かつボンクラなキャラクターがたくさん登場する小田原ドラゴン先生の漫画の大ファンなんです。思い切って取材を申し込んだら、意外にも快諾いただきまして、ありがとうございました! あの、先生の作品には絶対、童貞に対する何か美学とか、こだわりのようなものがあると思うんですよね。

小田原 いや~、別に童貞がどうのこうのというワケじゃないんですけど……。

ーえっ、そうなんですか?

小田原 単にムカつくんですよ。若くて楽しそうな連中は。特に女にモテるヤツはすごく嫌いなんです。それがたとえ映画や漫画の作り話だとしても、そういう人が出ているだけでイヤなんですね。学園ドラマなんて見てらせませんよ。そういうものと全然違う世界を描くといったら、モテない童貞やボンクラの話になっちゃうんです。要するに、まぁ、羨ましいだけなんでしょうけど(笑)。

ーいや、絶対にムカつきますよ、アイツらは。でも、情報によると先生は22歳のときに童貞を捨ててるんですよね。先生だって楽しいことしてるじゃないですか~。

小田原 いや、僕の場合は陽の当たらないテレクラですよ。しかも完全にセックスしたわけじゃなくて、テレクラで会った女のコとペッティングみたいなことをしたのが22歳だったんです。

ーテ、テクレラ!? テレクラで初めて会った女のコとペッティングまで持ち込むのは、童貞にとってはかなりハードルが高いんじゃないですか?

小田原 そんなことないんですよ。テレクラで知り合ったということは、多少はエッチなことをするかもしれないという暗黙の了解があるわけですから。まったくの普通の友達からペッティングまでいくのよりは抵抗がないんですよ。

ー確かにそうですね。で、どんな女のコが来たんですか?

小田原 それがですね、19歳でロッカーっぽい恰好をした、顔もまぁまぁの女のコだったんですよ。

ーえっ、革ジャンにミニスカみたいな?

小田原 まぁ、そんな感じかな。

ーすごいじゃないですか!!

小田原 で、自分の車で待ち合わせ場所まで迎えに行って……

ー22歳で車なんか持ってたんですか?

小田原 地元は兵庫県の田舎だから。田舎は車がないと暮らせないんですよ。中古の安い車です。その頃、僕はフリーターで、特に友達もいないし、もちろん彼女もいないので特にやることもなく、夜、一人でドライブするのが唯一の趣味だったんです。自分は童貞だからラブホの入り方がわからないでしょ。で、もし万が一、彼女が出来たらどこでセックスしようか…などと考えながら、山とかあちこちまわってたんですね(笑)。

ー一人で妄想ドライブですか。

小田原 このわき道は誰も来そうにないから、ここで車をとめてエッチできるな~とか頭の中でシミュレーションしながらいつも走ってたんですよ。で、その女のコをなんとか口説いてドライブすることに成功してですね、シミュレーションしたその場所に連れていこうとしたわけです。

ー世の中、何がいつ役にたつかわからないもんですね。聞いててなんだかドキドキしてきました(笑)。

小田原 彼女の気持ちをほぐすために一生懸命会話したりしながら、こっちはもう必死ですよ(笑)。で、なんとかその場所に着いて適当にお話なんかしていたわけです。電話ではお互いにエッチな話をしていたわけですから、エッチな話を振っても怒られたりしないわけですよね。で、意を決して「おっぱいだけでももませて!」って頼み込んだんです。

ーうわ~っ、やった~!!

小田原 ペッティングしているうちに向こうの心もほぐれてきたみたいで、「これはできる!」とは思いましたね。けど……

ーえっ、けど?

小田原 最後までは出来なかったんですよ。狭い車の中でそういうことするのは初めてなんで、やり方がまったくわからなかったんです。

ー何やってんですかぁ! そこは無理矢理にでも……。

小田原 いや~、僕はおっぱいパブだけで満足できちゃうタイプだから(笑)。ま、今日はいっか、って。帰る頃にはすっかり仲良くなって女のコから「おにぎり買ってあげるよ~」なんて言われたりなんかして。ヘヘッ。

ーヘヘッじゃないですよ。その後にもちろんリベンジがあったんですよね?

小田原 それがその頃は携帯電話なんてありませんから、連絡先を聞くことが出来なくて。でも、その体験があまりにも良かったんで、またその彼女に会えないかなぁ~と思って彼女と待ち合わせた場所をウロウロしたりしてたんですよ。そしたら、なんと、偶然に彼女と会えたんです。で、声をかけたらですね、完全に無視されました(笑)。

ーいや~、いいお話でした。ボクもテレクラ行ってみたくなりました。

小田原 今はダメですよ。昔からテレクラやっているような妖怪みたいな男と女ばかりだから(笑)。

ーそうなんですか。で、その後、初体験はどうしたんです?

小田原 それから1年くらいたって、バイトしていた引っ越し屋で知り合った女のコと付き合うようになって、わりと自然に。

ー普通に恋人同志としてやったんですね。すごいじゃないですか!

小田原 あのテレクラ体験で自信がついたんでしょうね。それまでそういう経験は何もなかったけど、いい予行練習になったんです。

ー初体験の場所は?

小田原 やはり車の中でした。後ろのドアを両方開けて、頭や足を出してやるという技術を学んだですよ(笑)。

ー大自然の中での初体験なんて羨ましいなぁ。

小田原 いや、その時はそれしか選択肢がなかっただけのことです。

ーしかし、先生の青春はぜんぜん屈折してないじゃないですか。

小田原 いやいや、テレクラまでが暗かったんですよ。高校時代はかなり鬱屈してました。昼休みとか、お弁当を一緒に食べる友達もいなかったので、弁当を食べないで一人で校舎をウロウロしてましたね。意味もなく階段を登ったり降りたりして(笑)。やはり一人で寂しく弁当を食べているところを人に見られるのはイヤだったんですよ。校内をうろついていれば、僕はぼっちの寂しいヤツじゃなくて、人からは風景の一部として認識されるわけじゃないですか。

ーわかります! 似たような経験はボクもありますから。

小田原 大学に進学しても友達が出来る気がしなかったんで大学へは行きませんでした。明るいキャンパスで独りぼっちでいるところ想像したらイヤになりますよ。

ーその頃はどんな生活だったんですか?

小田原 昼から夜はバイトで、さっきお話したように、夜中に一人でドライブすることだけが楽しみでした。録音しておいた水道橋博士などの深夜ラジオを聞きながら誰もいない田舎道を走るんです。同じテープを何度も何度も聞いてましたね。やはり寂しかったんでしょうね。深夜放送の仲間的な語り口に癒されていたのかもしれません。

ーそれは相当鬱屈してますね。ボクなんかまだまだだなぁ。

小田原 その頃は、僕は一生女のコと縁がないと思ってました。女のコと知り合うきっかけもなかったし。ところがある日、バイト先の飲み会の後で、みんなでテレクラに行ったんですね。それが最初にお話した体験につながるわけです。初めてのときはまったくアポ取れなくて、テレクラ漫画家の成田アキラ(注:1)さんの本とか読んで勉強したりしてね。

ーところで、そんな先生が漫画を描くきっかけって何なんですか?

小田原 親から「就職しろ」ってうるさく言われたから。それだけです。1年間だけ漫画を描いてみて、芽が出なかったら就職するという約束で。漫画を読むのは好きだったけど、漫画なんか一度も描いたことがなかったんですけどね。

ーじゃ、働くのがイヤだったから漫画でも描いてイッパツ当ててやろうと思って描いたら、本当に当たったんですか!?

小田原 まぁ、そんな感じです(笑)。当時、山田花子(注:2)さんが好きで、あんな感じで自分の学生時代の絶望感みたいのを描けないかな、と思って。もちろん、漫画なんか描いたことないわけですから、コマ割りもペンタッチもメチャクチャですよ。たまたま投稿した『週刊ヤングマガジン』が絵が下手でも載せてくれる心の広い雑誌だったんでラッキーでしたね。

ー鬱屈した学生時代のおかげで漫画家になれたわけですよね。いいなぁ。でも、お金も名誉も手に入れて、原動力みたいなものが失われてしまったのではないですか?

小田原 いや~、それが歳を重ねるごとに、若くて楽しそうなヤツら見ると腹が立ってくるんですよ(笑)。今、僕が合コンやっても来るのが30代の女性ばっかりなんです。僕らが合コンやっているすぐ側で高校生のカップルがイチャイチャしているとメッチャ羨ましくなってくるんですよ。

ー高校生としたいんですか?

小田原 いや、それはさすがにマズいので大学に入りたての女子大生でいいです。

ーファンの集いでもやれば若い女のコも来るんじゃないですか?

小田原 いや~、男のファンばかりだし。こうなったら可愛い犬の漫画でも描こうかな(笑)。

ー若いコ好きがたたって今も独身というわけですか?

小田原 もともと結婚願望はないんです。一人でいるほうが気をつかわなくていいので気楽だし。

ーでも、若くて可愛いアイドルだったらするでしょ?

小田原 ハイ。特におっぱいがでかくてムチムチしているコがタイプです。

ー誰だったらいいんですか?

小田原 実はグラビアの女のコってよくわからないんですよ。いくらグラビアの女のコを好きになっても、絶対に僕とはつきあってくれないじゃないですか。だから、わざとプロフィールページはとばして、名前とか覚えないようにしているんです。本気で好きになっちゃうと、自分の普段の生活で会う女性が劣化品に見えてしまってイヤなんですよ。

ーう~ん、それはすごい発想ですねぇ。

小田原 特に篠崎愛(注:3)ちゃんの名前だけは覚えたくなかった……。たまたまあるグラビア雑誌の編集者が、僕が愛ちゃんを好きだということを聞きつけて、愛ちゃんに会わせてくれることになったんですね。魔が差したというか、ノコノコ撮影現場に行ってしまったんです。本当は行きたくなかったんですよ。会えば篠崎愛という人間が現実に存在することを認識しなければならないですから。幻として愛していたかったのに……。

ーメジャー誌で連載持っている漫画家なんですからガツンと口説けばモノに出来るかもしれないじゃないですか。

小田原 ダメですよ~。『ワンピース』ぐらいじゃないと愛ちゃん知りませんよ。で、せっかく会ったのに愛ちゃんとの会話は二言三言だけ。それも愛ちゃんが気を使って声をかけてくれた感アリアリでしたからね。自己嫌悪ですよ……。愛ちゃん、一度事務所やめたんだけど、最近また出てくるようになったでしょ。ウザイな~と思って。いっそ消えてくれたほうがいいんですよ、本気で好きだから……。

ー鬱屈してるなぁ。

小田原 僕はAVも見ませんよ。男優がムカつくんで。見るとしたらカラミのないイメージだったんですが、最近、それを撮っている男のスタッフが周りにいるんだよな~と気づいて見るのがイヤになりましたね。

ーもう、空想するしかないのでは?

小田原 実在する可愛いコは想像するのもイヤですね。身近にいて、あまり可愛くない、もしかしたら頼んだらやらせてくれるんじゃないか、という架空の女性を妄想するんですよ。

ーう~ん、わがままなのか謙虚なのか、よくわかりませんねぇ(笑)。とりあえず、鬱屈は何かを生み出すための原動力になることがわかったので良かったです。今日はありがとうございました!



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(脚注)

注1:『テレクラの秘密』などのテレクラで出会った女性との実体験マンガで人気を集めた漫画家。そういった作風になる以前には、手塚治虫のアシスタントを努めたり、SFものの科学漫画を描いていたりしたこともあった。

注2:『神の悪フザケ』などの作品で知られる漫画家。学生時代いじめにあった実体験から影響された、人間不信や人の心の暗部を描き出すような作風でカルト的な人気を得る。92年、飛び降り自殺により、24歳の若さで夭逝した。

注3:92年生まれ、シャイニングウィル所属のグラビアアイドル。童顔とFカップのグラマラスな体型が評価され、現在、巨乳系グラドルとしては1.2を争う。アイドルユニットAeLL.として歌手活動も行っている。










(この記事はコアマガジン刊『スーパー写真塾』からの転載です)

小田原ドラゴン

70年生まれ、兵庫県明石市出身。97年『僕はスノーボードに行きたいのか?』でデビュー。01年『コギャル寿司』にて文藝春秋漫画賞受賞。もてない男や童貞男を取り扱った作風には定評がある。『週刊ヤングマガジン』にて『チェリーナイツ』が好評連載中。最新情報はツイッターアカウント(@odawaradoragon)をチェック。ちなみに、ペンネームは、引越しのバイトをしていた時、常にブルース・リーのTシャツを着ていたためついたあだ名が由来なのだそう。



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