ケロッピー前田の変態カタログ★リターンズ37
身体改造
BODY MODIFICATION: BIZARRE GLOSSARY by KEROPPY MAEDA
日本の投稿界では、今や性器ピアスは「奴隷の証し」として、SM調教になくてはならないものになっている。「もっと過激なものはないですか?」というマニアたちは、イレズミや性器拡張にも突き進み、愛奴の身体でどれだけの遊べるか、飽くなき探究心を持って実践している。一方で、若い愛好者たちはボディピアスよりも“過激なもの”を「身体改造(ボディ・モディフィケーション)」に求めている。
「ボディ・モディフィケーション」とは、元々、タトゥー、ピアスを含めた身体の加工&変形の総称。しかし、タトゥーやピアスが一般化した今、より難易度が高いものを示し、「身体改造」と訳されている。90年代、欧米ではタトゥーとピアスの大流行が起こり、ビジネスとして確立され、広く普及した。さらにその先を目指して登場したのが、“過激なもの”を求め続ける「身体改造」マニアたちである。94年に身体改造ホームページの草分けBME(ボディ・モディフィケーション・イージン)が始動すると、ネットを通じて「身体改造」はたちまち世界同時進行で展開するムーブメントに成長した。アリゾナ州で生まれた「インプラント」、NYのオールバニーで最初に試みられた「スプリット・タン」、カナダのトロントの「ブランディング(焼印)」、フランスのアヴィニョンの「カッティング(スカリフィケーション)」など、各地の最新情報が瞬時に世界へと伝えられた。もちろん、ネット上の情報だけでシーンが動いていたわけではない。
「身体改造」が一つのジャンルとして確立されるための決定的な出来事は、BME主催で99年より始められた「モドゥコン(身体改造世界大会)」である。そこには、長年地下に潜っていた改造の実践マニアたちが参加した。「サブインシジョン(男性器切開)」、「アンピュテーション(指、手足の切断)」、「キャストレーション(去勢)」 など、世間から全く理解不能な“改造の快楽”にどっぷりとハマってきた人たちである。そこではジェンダーのエロスよりも、改造された身体へのエロスが優先され、例えば、アンピュテーションの実践者たちは、相手の性別や年齢より、欠損の度合いと切断面の仕上がりに欲情した。そのような“本物の変態”たちの強烈なオーラは、若い愛好者たちに大きな影響を与え、“改造の快楽”の発見へと繋がったのだ。
さらに追い求められる“改造の快楽”はどこに向うのか? その現場に立ち会えるまで、まだまだ本当の“未来”とはいえない。
●ボディピアスから発生した難易度の高い「身体改造」は、90年代半ばからネットの普及と同時に世界同時進行のムーブメントになった。
●皮膚下に素材を埋め込む「インプラント」には、皮膚から一部が突き出た「トランスダーマル・インプラント」もある。
ケロッピー前田
1965年生まれ。身体改造、サイボーグ、人類の未来をテーマに取材を続ける。主な著書に「スカーファクトリー」(CREATION BOOKS)、監修DVD「ボディ・モディフィケーション・フリークス」(ワイレア出版)など。ツイッター「keroppymaeda」にて改造イベント情報など発信中。keroppymaeda.com
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